環境に配慮した都心に近い便利な空港 ?フェニックスの翼?が、神戸経済浮揚への期待を担って待望のテイクオフ― ―。神戸市が、ポートアイランド沖の海上に建設を進めていた神戸空港マリン エアが完成し、今日16日に開港を迎えた。「環境に配慮した都心に近い便利な 空港」は、神戸市が設置・運営する第3種空港で、2,500mの滑走路(1本) をはじめ、旅客ターミナルビル、エプロン、駐車場などを整備。人・物・情報 の交流促進はもとより、経済の回復や雇用の確保などにも寄与する都市装置の 建設は、精鋭施工陣が海洋テクノロジーを駆使しながら情報化施工を推進し、 1999年11月の護岸工事着手から5年7か月の急速施工で高品質に完成させた。
【写真上は、ポートアイランド沖の海上に誕生した"フェニックスの翼?は経 済の回復と雇用の確保をもたらす。写真下はマリンブリッジ】 ----------------------------------- 待望の現地着工を迎えたのは、神戸市が1982年に「神戸沖新空港計画試案」を 発表してから17年の歳月が経過した99年9月。建設予定海域を囲む水質汚濁防 止膜を張り巡らす作業ならびに潜水探査からスタートし、10月29日には安全祈 願祭、起工式が盛大に催された。
《精鋭各社が高度な技術力を駆使》 この節目を契機として、先陣を切る外周護岸工事が本格化。精鋭施工陣が環境保全に万全を期しながら、これ までに培ってきた高度な技術力とコンピューター船をはじめとする最新の海洋テクノロジーを駆使して?精度 と時間との闘い?に挑んだ。地盤改良の第一ステップとなる敷砂工では、大型の砂撒船を駆使して海底表面に 厚さ1mの均一な敷砂層を形成。また、平均8m程度と予想されていた空港島の沈下を抑止するための地盤改 良については、サンドドレーン(SD)工法とサンドコンパクションパイル(SCP)工法を採用して推進し た。地盤改良が完了した箇所からは、杭頭を保護するための敷砂工を進め、引き続いて盛砂を開始。基礎捨石 の投入は2000年10月から始まり、4か月間に亘る圧密放置期間を置いてから上部の本体捨石工を推進した。 空港島を形づくる全長7.7?の外周護岸。01年4月に北東護岸が初めて海上に現れたのに続いて7月には南護 岸が顔をのぞかせ、10月初旬に作業船用の開口部(2か所)を除いて空港島全体の輪郭が海面に姿を見せた。 エコアップエアポートづくりの一翼を担う環境創造型護岸の築造は、この後も上部方塊ブロックの据付が順調 に進捗。また、波浪の強い南・西護岸においても消波ブロックの据付が02年6月に完了するに至り、同年10月 末には一部作業船の出入口を除く約7?の外周護岸が完成した。 《情報化施工で一定の品質確保》 一方、埋立工事は01年秋から本格化。神戸市独自の連続一貫システムを活用して推進した埋立に必要な土砂量 は、約6,600万立方メートルと試算され、西区の複合産業団地造成やその周辺で発生する土砂や神戸市内で発 生する建設残土ならびに浚渫土砂をこれまでに約6,150万立方メートル受け入れている。埋立後に行った盛土 造成(約850万立方メートル)において使用した重機は最大14台。大水深の軟弱海底地盤上に急速かつ大量に 埋立造成を行うため、情報化施工を導入して一定の品質を確保しながら変化する現場条件への対応を図ってい った。 なかでも、GPSと無線LANおよび三次元CADを駆使した施工管理システムは、データベースサーバーを 中心とした事務所側の基幹システムと、重機搭載システムで構成されており、現場に無線LANネットワーク を構築することによってリアルタイム通信を可能としたもので、経済的かつ安全な施工に大きく貢献した。空 港施設の盛土造成において主体となる土工重機は、ブルドーザーと振動ローラー。品質管理においては、振動 ローラーに搭載した加速度計から得た乱れ率を演算処理し、地盤変形係数、締め固め密度による管理を行っ た。 出来形管理は、ブルドーザーおよび振動ローラーに搭載したGPSによる重機の軌跡管理システムを用い、施 工結果から得られた敷均し・転圧結果を三次元のCADデータベースに保存し、図化することで施工出来形の 確認を可能とした。また、施工計画作成支援は、三次元のCADデータを用いて各重機に対して施工エリアお よび出来形を情報提供することで重機の効率的な運用計画を作成し、帳票データの抽出によって計画の確認を 容易にした。 《環境保全にも万全の対応》 重機オペレーターに対するデータの提供によって可能となったのが施工指示支援。無線LANを用いることに より、土工重機のネットワーク化が実現したからで、三次元のCADデータを共有することにより、重機の連 携管理が可能となった。このほか、施工エリアの直接指示や敷均しが終了したエリアを振動ローラーに引き継 ぎ、転圧回数、転圧エリアに関する必要な情報を提供。これにより、施工を経済的かつ効率的に行うことが可 能となった。 このように、情報化施工の一環として、盛土造成においてGPSと無線LANおよび三次元CADを駆使した 施工管理システムを活用したことにより、設計・施工・品質・出来形管理データを現場で共有し、丁張レス施 工やデータ指示の効率化、リアルタイムの施工管理による品質管理の高度化を具現化するなど、様々な効果を もたらした。精鋭各社が、世界に誇る海洋テクノロジーの粋を結集してポートアイランド沖に完成させた神戸 空港。時間と精度との闘いを制して誕生した利便性の高い都市型空港から、一番機が力強く飛び立った。 ------------------------- 《経済の回復・雇用の確保にも寄与》 「住み・働き・憩い・学ぶ」という総合的な機能をすべて備えている世界初の海上文化都市・ポートアイラン ドの沖合約3?に位置する海上に建設を進めていた神戸空港マリンエアは、神戸市が整備・管理・運営する第 3種空港。真の復興と新たな飛躍を遂げるための?フェニックスの翼?としての大きな期待を担って今日16日 に待望の開港を迎えた。 新交通ポートアイランド線が延伸され、三宮から空港の旅客ターミナルまでポートライナーによって約16分で 結ばれるという利便性を誇る神戸空港は、世界各国を結ぶ国際空港(関西国際空港)ならびに国内基幹空港 (大阪空港)と機能を分担し、長期的かつ着実に増加する国内航空旅客に対応しながら3空港のネットワーク で関西の未来を拓いていく?都心に近い便利な空港?。272haの空港島内には、国内線の大型ジェット機の離 発着が可能な2,500mの滑走路(1本)をはじめ、旅客ターミナル、貨物ターミナル、エプロン、ライン整備 用格納庫、小型航空機整備施設、鉄軌道車庫ならびに港湾関連施設、都市再開発用地、総合物流施設、地区セ ンターなどを設けている。 また、都心との近接性を生かしながら、市民に開かれた水辺や新たな海の環境を創造するエコアップエアポー トとしても整備し、利便性と環境保全という一般的には両立が困難な要素を満たしているのも特徴で、人と環 境にやさしい空港として新しいまちづくりを促進していく。 《人・物・情報の交流を促進》 さらに、海・空・陸の連携によって人・物・情報の新しい流れを創出する神戸空港は、「集客観光都市」、 「情報文化都市」、「医療産業都市」の実現に貢献。なかでも、都心に近い便利な空港は、本格的な高齢化社 会の到来に伴って今後の成長が期待されている医療関連産業の集積や研究開発、人材育成の拠点づくりをサポ ートするばかりでなく、臓器、血液などの緊急輸送や重症患者の救急搬送にも重要な役割を果たしていく。 阪神・淡路大震災からの着実な復興と経済の立て直しが強く求められている神戸市にあって、神戸空港は将来 に亘って働く場を生み出す都市装置であり、市民にとっての貴重な財産。騒音が住宅地に影響しないという海 上空港の利点を生かした午前7時から午後10時までの運用を行い、開港当初は、日本航空、全日本空輸、スカ イマークエアラインズの3航空会社が、札幌・仙台・新潟・羽田・熊本・鹿児島・那覇の国内7路線27便を就 航する。