
着々と進む水質改善 人口の減少や地球温暖化、科学技術の急速な進歩など、これからの社会のあり 方を根底から変化させる大きな潮流を前に、県民と共有する道しるべとして策 定された「やまと21世紀ビジョン」。奈良の3つの個性である「歴史の?奈 良?」、「住まいの?奈良?」、「共生の?奈良?」を生かし、住民、企業、 行政などが一体となって取り組むことにより、「住む人々には安心でこころ豊 かな暮らし」と「訪れる人々には感動と満足のとき」を実現し、基本目標であ る「世界に光る奈良県づくり」を目指していくための将来像で、2035年を目標 年次として定めている。 ※写真:電気・機械設備工事が進む浄化センターの7系水処理施設
その奈良県における下水道整備事業は、1970年度に大和川上流流域下水道事業に着手したのが始まり。大和川 流域をはじめとする各流域の水質保全ならびに生活環境の整備・改善が近年における喫緊の課題として浮かび 上がる中、快適で健全な生活環境の創造を目指していくことにした。 また、1980年度には宇陀川流域下水道 事業に着手して下水道普及率の向上に努めるとともに、吉野川流域においても1982年度に第2種流域下水道事 業として新規採択された区域(五條市、吉野町、大淀町、下市町)を対象に1983年度から事業に着手して現在 へと至っている。 こうした取り組みにより、2005年度末現在における奈良県の下水道普及率は、68.1%に達 しており、今後も処理場施設や管渠の整備に努めていく。 一方、「下水汚泥を有効な資源として活用し、快適な環境を目指す」という方針に基づいて展開している機能 高度化促進については、下水汚泥をセメント原料の1部として利用する下水汚泥セメント資源化施設が大和川 流域第2処理区で稼働している。 ■大和川上流流域下水道 大和川流域内の全市町村を計画対象区域として、第1処理区と第2処理区に分けて事業を展開している大和川 上流流域下水道。「やまと21世紀ビジョン」の基本目標である「世界に光る奈良県づくり」の一翼を担う下水 道整備事業のカギを握っている。 <第1処理区> 大和川流域の中にあって、人口の増加傾向が最も著しい地域である第1処理区は、1971年2月に都市計画決定 を行って事業に着手したもので、奈良市、大和郡山市、天理市、橿原市、桜井市、生駒市、香芝市の七市と、 安堵町川西町、三宅町、田原本町、広陵町の五町が従来からの対象地域となっていた。 また、1991年3月からは、都市計画変更に伴って旧第三次計画区域の平群町、三郷町、斑鳩町のほか、生駒 市、安堵町の一部が第一処理区へと編入されたことにより、現在における第一処理区の計画区域面積は約2万 6,500平方m、計画人口は約102万人、計画処理水量は約69万立方m/日となった。
1974年6月の供用開始以来、大和川流域の水質保全に大きな役割を果たしている浄化センターは、大和郡山市 額田部南町(敷地面積57.5ha)に設けられており、処理能力は28万2,500立方m/日。現在は、奈良市、大和 郡山市、天理市、桜井市、生駒市、香芝市、川西町、三宅町、田原本町、広陵町の汚水を受け、20万4,800立 方m/日の処理を行っている。 また、各市町における公共下水道事業の進捗に整合させるための七系水処理施設増設工事を2007年度の完成を 目指して順調に進めている。なお、総延長が96.4?におよぶ幹線管渠の敷設は、2005年度末までに92.3?が完 成している。 <第2処理区> 大和高田市、橿原市、御所市、香芝市、葛城市、高取町、上牧町、王寺町、広陵町、河合町、明日香村の5市 5町1村を対象とする第二処理区の計画概要は、処理区域面積が約1万7、000ha、処理人口が約51万人、処 理水量が約39万立方m/日となっている。 広陵町萱野(敷地面積39ha)に設けられている第2浄化センターでは、現在、大和高田市、橿原市、御所 市、香芝市、葛城市、高取町、上牧町、王寺町、広陵町、河合町、明日香村の汚水を受け、7万3、000立方 m/日の処理を行っている。なお、幹線管渠の敷設については、平成17年度末現在において、総延長72・8? mのうち、69・0?mが完成している。 ■吉野川流域下水道 1983年度から、五條市、吉野町、大淀町、下市町の1市3町を対象として事業に着手したもので、計画概要 は、処理面積が3,500ha、処理人口が約7万5,000人、処理水量が5万1,000立方m/日となっている。 1991年4月から五條市の1部の汚水を受けて供用を開始した吉野川浄化センターは、五條市二見(敷地面積 13ha)に設けられており、現在では、1万5,600立方m/日の処理能力を有している。また、第2ポンプ棟の 増設工事についても、2007年度の供用開始を目指して順調に進められている。なお、幹線管渠の敷設は、総延 長23.4?のうち、23.0?が完成している。