大都市港湾として、産業・経済活動を支える大阪港では、港湾機能の強化は もとより、臨海部の新しい都市としての整備が進められている。その中心と なるのが、沖合いに展開する咲洲・舞洲・夢洲の各人工島で、現在では、ス ーパー中枢港湾の実現に向けた取り組みが続けられている。こうした中、大 阪港の整備を担当する大阪市港湾局では、港湾施設の拡充とともに、臨海部 開発を先導する各種の施策を推進し、大阪港の発展に努めている。その指揮 を執る川本清局長に、今後の取り組みなどを聞いてみた。 夢洲140haをハードで先行開発 活気の出てきたコスモスクエア2期地区 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ――まずは今年度に実施された事業の現況からお聞かせ下さい。 ■川本局長 夢咲トンネルでは現在、夢洲側で工事を実施しております。 2009年度には、スーパー中枢港湾で3バース連続の高規格コンテナターミナ ルの運用を支える交通基盤として重要な役割があり、予定通りの供用が間に 合うか、現地の地盤が若齢の埋立地盤のため工事の進捗にあたり若干、心配 しておりましたが、工事を担当される国土交通省の頑張りにより、予定通り にターミナルとともに供用する見通しで安堵しているところです。
――その夢洲の開発ですが、現在も造成工事が実施されております。 ■川本局長 ターミナルとその背後地約140haを先行整備地区として、新しい物流基地やものづくりの拠点と して考えており、早期に竣功させたいと計画しております。一方で夢洲は、大阪市内で発生する建設残土や 浚渫土砂の処分場として重要な機能があります。こちらの造成は、今後10年以上はかかると思われ、受け入 れが終了した地区から段階的な整備になりますね。 ――先行整備地区はスーパー中枢港湾の中心機能を担うことになりますが、その取り組み状況では。 ■川本局長 先行整備地区を第1期として出来るだけ早期の整備を目指し、物流関連企業の誘致を進めま す。ハード面ではC−12ターミナルを国交省で整備中で、背後ヤードは夢洲コンテナターミナル(株)工事 やガントリークレーンなどを整備し、舗装工事は一部先月に着工しました。 ――コスモスクエア地区では2地区で施設立地が進んでいるように感じられますが。 ■川本局長 ええ、2004年に企業等立地促進助成制度を創設し、翌年にはOTS線の運賃値下げを行い、こ れらを梃子に企業誘致に力を入れてまいりました。その結果、これまでに11件、約6haの土地利用が実現し ました。入国管理事務所の開設により外国の方も訪れ国際色が豊になり、学生など人の往来が増えてきたこ とで活気が出てきたことは確かですね。 ――新島の進捗状況としては。 ■川本局長 フェニックス事業で護岸の残工事を終えて、来年度からの廃棄物受け入れを目指します。近畿 2府4件と各市町村からの要請も高く、早期の受け入れ開始に向け精力的に動こうかと思っております。 ――地震等の自然災害に対する取り組みでは。 ■川本局長 防災に関しては、やはり津波対策が重要となってきます。防潮堤の補強、水門鉄扉の開閉など に加え、平成18年度から大阪港地震津波検討委員会で防災、減災対策の検討を重ね、今年3月に大阪港地震 津波対策アクションプランをまとめていただきました。 ――内容は。 ■川本局長 国をはじめ自治体、港湾関係者が連携しプログラムに則り、自助・公助・共助の考えの下、ハ ード・ソフト両面での取り組みを進めるものです。完璧な防災・減災は不可能で、要は、どうしても防ぎき れない部分をいかに少なくするかで、目標としては早期的なものと長期的なものに分けて取り組んでまいり ます。 来年度はバランス執りながらの事業執行へ 夢咲トンネルら仕上げ、ストック活用も ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ ――さて来年度についてですが事業の見通しとしては。 ■川本局長 予算的には厳しいものとなりますね。夢咲トンネルやターミナル整備については仕上げ段階に なります。また、コスモスクエア地区では居住人口も増加しつつあることから、住民に対する安全と安心の 確保など、必要なものについては実施していきます。夢洲のターミナルが完成することから、これと既存施 設の有効活用なども考えていきます。 ――トンネルやターミナルなどの継続事業の仕上げとストックの有効活用ですね。 ■川本局長 ええ、これまで市政改革が行われている中でも、スーパー中枢港湾関連にはかなりの重点投資 を行ってきました。ですから今後は、全体的なバランスを考慮しながら事業を執行する時期になってまいり ます。港湾だけが突出するわけにはいかず、トータルに整合性を図っていかなければなりませんね。しかし ながら、その中にあっても必要なものについては実施していきます。 ――夢洲のターミナル供用によりスーパー中枢港湾としても本格稼動が始まりますね。 ■川本局長 そうですね。ターミナルはもとより、関連する道路整備などを上手く仕上げていかなければな りません。また、夢洲ターミナルが稼動することにより、既存埠頭などの再編も必要となってまいります。 大阪港はアジアからの貨物が多く、コンテナやRORO船に関しては、中国はじめアジア諸国では大阪が距 離的にも限度とされ、また、国際フェリーでもアジア方面の需要が高いため、咲洲から夢洲に移った跡の埠 頭でこれらに対応し、活用することで競争力も高まるものと考えております。 ――昨年から大阪湾諸港との一開港化が実施されておりますが、一開港化によるメリットは出てますか。 ■川本局長 神戸と大阪の両港に寄港する船舶は若干ではありますが増えてきておりますね。入港料や特別 トン税など、利用者がメリットを享受できるようにし、また、次の施策も考えていかなければなりません。 ――さて、建設業界は未曾有の建設不況ともいえる状態にあり、建設各社では厳しい環境にありますが、何 かアドバイスなりございましたら。 ■川本局長 我々も同じ仲間と思っておりますが、この状況をなんとか乗り切ってほしいですね。そのため には新しい技術や工法の開発、智恵を絞って国土の開発、インフラ整備に貢献していただきたいと思ってお ります。技術力の高さは世界的にも実証されておりますが、さらにステップアップしていただきたい。特に 新エネルギー開発や環境対策などにも対応できるようよなシステムづくりに取り組んでほしいですね。 ――まだまだ、取り組め分野はある。 ■川本局長 現在、大阪湾臨海部はパネルベイと言われるものづくり産業の立地が進んでおりますが、その 次に来る新しい物流システムの整備が必要となり、それには建設業界の力、協力が必要になると思います ね。また業界からも意見、提案を出していただければ議論させていただきますし、迅速な対応も心掛けてま いります。 ――そうですね。これからも事業推進にご尽力下さい。ありがとうございました。