最先端医療に対応、安全・安心・快適な空間創出 地域の中核病院としての役割と、一次から三次までの救急医療体制を備えた急 性期病院としての信頼に応える安全で良質な医療を提供―。「心のこもった医 療」を基本理念として掲げ、地域住民の期待に応える診療体制の充実を図って きた「大阪府済生会千里病院」(林亨院長)において、高度化・多様化する医 療ニーズへの対応、患者サービスの向上、地域との連携・情報交流の促進など を目指して建設を進めていた新病院が完成し、7月1日に開院した。鉄骨鉄筋 コンクリート造地下2階地上8階建て、延べ床面積2万1,325.47?の規模を有 する病棟(343床)の外観はユニークな三角形で、スタッフステーションを取 り囲むように病室を配置して明快で安心感のある動線を確保。一方、最先端医 療に対応する多種・多様な施設・設備を備えるとともに、アメニティの高い、 安全・快適な病院として地域の中核医療を担っていく済生会千里病院の新病棟 の施工を担当し、多くの関係者から寄せられていた期待と信頼に応えたのは大 林・奥村共同企業体。品質の向上を目指しながら、作業の効率化と工程の合理 化を図り、全工期無事故・無災害での高品質施工を達成した。
【写真上:大阪府済生会千里病院】
【写真下:病室】
1969年5月30日、明治天皇の「済生勅語」によって創立されて以来、「済生」の心を受け継ぎながら、保健・ 医療・福祉の充実・発展を目指した活動を多方面にわたって続けている社会福祉法人恩賜財団済生会。医療法 に基づき1951年8月22日に公的医療機関に指定されるとともに、翌年5月22日に社会福祉事業法(現在は社会 福祉法)に基づく社会福祉法人に認可された済生会は、90年余の歴史と伝統の中で、社会が求めるサービスの 提供に努めながら機能の充実を図ってきた。 生命を救う心「済生」を原点として、幾多の変遷を経ながらも着実な歩みを続けてきた済生会が目指すのは、 病院を母体として保健・医療・福祉が連携した総合サービスの実現。この考え方に基づき、全国各地に病院、 介護老人保健施設、老人・児童福祉施設、訪問看護ステーションなど、350余の施設を設け、約3万9,900人の 職員が保健・医療・福祉活動に取り組んでいる。 このうち、医療関係の施設数は89(病院79、診療所10)、病床数は2万2,522床におよび、入院・外来の患者 数は年間延べ1,980万人を数える。 全国に広がる済生会の医療と福祉の理想。その一翼を担う大阪府済生会にある基幹病院の一つである「大阪府 済生会千里病院」において進めていた新病院の建設工事がこのほど完成し、7月1日に開院した。 1967年に大阪府と大阪府3師会(医師会、歯科医師会、薬剤師会)とによって設立された大阪府保健医療財団 新千里病院を前身として2003年4月1日に開設された「大阪府済生会千里病院」は、阪急千里線南千里駅前に 位置する利便性と緑に囲まれた素晴らしい環境を誇る地域の中核病院で、「心のこもった医療」を基本理念と して掲げ、地域住民の期待に応える診療体制の充実を図ってきた。 具体的には、外来診療における土曜日診療や平日午後診療の増設、社会福祉法人としての福祉面の充実を図る ための福祉相談室の設置をはじめ、病院周辺への無料シャトルバスの運行、地域住民を対象とした健康講座や 糖尿病教室・肝臓病教室、出産準備のための母親教室の充実を図ってきた。 また、病診連携・病病連携の推 進のため、登録医との症例検討や学術講演会を定期的に開催するとともに、患者紹介や検査予約の受付など、 地域医療連絡室の業務時間を20時まで延長して登録医との連携をさらに深めたほか、地域住民に対する健康講 座を積極的に拡大するなどして地域医療への貢献・地域住民との関係強化を進めている。 新病院の完成によ り、大阪府立千里救命救急センターを併合し、地域の中核病院としての役割と、1次から3次までの救急医療 体制を完璧な形で遂行できる機能を備えた急性期病院としてさらに充実した体制が整った「大阪府済生会千里 病院」。その新病院の構造規模は、鉄骨鉄筋コンクリート造地下2階地上8階建て、延べ床面積2万1,325.47 ?で、患者を第一に考えたより安全で快適な環境を整えている。 高度化・多様化する医療ニーズへの対応、患者サービスの向上、地域との連携・情報交流を一層強化するため に建設された新病院の床数は、一般病床300床(開放病床10床含む)、救急病棟31床、ICU12床の合計343 床。病棟の外観はユニークな三角形で、スタッフステーションを取り囲むように病室を配置しているので、全 ての病室への動線が明快で、患者に安心感をもたらす。 また、病室は、ゆとりのある四床病室と個室のみで、清潔で開放感のある空間を創出。全ての病室にトイレと 洗面台を設置しているので、快適な入院生活が送れる。高度先進医療を行うための最新の設備を備えた明るく 快適で安全・安心な新病院。眺望に優れる屋上庭園、ふれあいを大切にしたデイルームの設置など、入院患者 のアメニティにも十分な配慮を加えている。 〜大林・奥村共同企業体が高品質施工〜 地域の中核病院としての役割と、第1次から第3次までの救急医療体制を備えた急性期病院としての体制を整 えて7月1日から新たな歩みを始めた「大阪府済生会千里病院」。それへの布石となる建替工事の施工を担当 し、新病院を高品質に完成させたのは大林・奥村共同企業体で、発注者の社会福祉法人恩賜財団大阪済生会な らびに病院関係者から寄せられていた期待と信頼に応えた。 勝田正明所長をはじめとするJV、各協力会社 の有能なスタッフが一丸となって取り組んだ工事は、平成17年2月2日に催された安全祈願祭を契機として 軌道に乗り、既存の看護師寮および千里会館別館の解体を約1か月で完了させたのに引き続いて3月から新病 院の建築に着手した。 敷地が傾斜地だったため、先行鋤取りとラップさせながら進めた山留めは、阪急電車側をソイルセメント柱列 壁、その他については親杭横矢板を採用し、アースアンカー工法によって地下部分の大空間を確保した。 阪急電車側の低層棟は一次掘削、西側の高層棟は二次掘削(GLマイナス11.3m)を約2か月間かけて推進。 床付けレベルが違う箇所が多くあったため、施工性などについての事前協議を重ね、床付けレベルを均一とし た。 5月のゴールデンウィーク明けからは、基礎工事に着手し、23日に最初の耐圧盤コンクリートを打設。また、 6月9日からは基礎地中梁コンクリートの打設を順次行い、およそ1か月後には地下躯体工事が始まった。高 層棟と低層棟でレベル差があったため、地下躯体工事は五工区に分割して施工。特に、建物の形状が三角形に なっている部分では、鉄筋の納まりを検討しながら慎重に施工し、8月30日に打ち上げを果たした。 この間の7月16日からは第1節の鉄骨建て方を開始。低層棟は地下1階から地上3階までを2節、高層棟は地 下1階から地上7階までを3節に分け、50トンクローラークレーンとTCを使用して揚重した。なお、低層棟 と高層棟の取り合い部分は、すべり支承となっており、地震時の変形に追従するようになっている。 「年内に完了させる」という目標を掲げ、四工区に分割して推進した地上躯体は、ワンフロア当たり11日ピッ チでの上昇を目指して作業員が一丸となって取り組み、最終的には10日タクトを達成。この結果、12月28日に 打ち上げを迎えることができ、マスター工程を厳守した。 また、10月から着手した内装についても今春の4月末に完了するに至り、5月から始まった諸検査を経て同月 末に引き渡しが行われた。 この後は、既設建物の改修工事を進め、8月初旬から既存病棟の解体に着手。外構整備を含め、来年1月の完 了を目指していく。 こうして、「顧客満足の向上を目指した継続的改善の実践に基づき、顧客が安心し、誇りを持って使うことの 出来る建物を提供する」という品質方針に基づいて進められてきた新病院の建築工事は、顧客のニーズを的確 に反映して無事に完了し、今後についても解体工事などを安全第一に推進していくが、「病院という建物の性 格上、医療関係についての仕様を把握するための検討を十分に行った上で施工する」、「瑕疵のない建物を造 る」という方針を掲げていた作業所においては、特に、▽外壁における漏水の防止、外壁タイルの剥落防止▽ 配線接続部の品質管理▽クロスコネクションの防止―と重点的に取り組んで高品質を確保した。 また、「建物の通り芯が45度振っていたため、大変苦労した」(勝田所長)が、躯体交差部分の鉄筋の納ま りや鉄骨の納まりなどに関する事前検討によって問題点をひとつ1つ解決していき、不具合の発生防止に努め た。 一方、安全管理については、西面には阪急電車、北面には南千里公園、東面には運用中の済生会千里病院が近 接しているという条件を考慮し、第三者災害、飛散防止にはとりわけ留意したほか、墜落・転落・重機災害の 防止を重点項目として定め、ATKY(安全点検危険予知)などを通じて全作業員の安全意識の向上に努めて きた。 この結果、現在までに80万時間におよぶ無事故・無災害記録を更新中で、今後も安全第一に残りの解体工事な どを推進していく。 勝田正明所長の話 病院・設計事務所に提案した仮設計画の見直しを快諾していただいたことにより、資材の搬入などにおいて敷 地の有効活用を図ることができ、短工期の克服へとつながりました。また、顧客のニーズを満たすため、品 質・安全・環境面のそれぞれに留意しながら全てのスタッフ、技能工が一丸となって工事に取り組んだ結果、 無事故・無災害のうちに新病院を完成させることができたのは大きな喜びです。これも偏に、関係各位のご支 援、ご指導の賜であり、心から感謝申し上げますとともに、残りの解体工事などにつきましても気を引き締め て施工して参りますので、引き続き変わらぬご支援、ご指導をお願い申し上げます。