
大阪府都市整備部 丸岡耕平部長に聞く 社会資本整備は、社会や経済情勢の変化に対応しながらも、後退は許されない ものとなっている。大阪府におけるインフラ整備の役割を担う都市整備部で は、厳しい財政状況の中にあっても、「創意」と「工夫」で各種の施策を推進 している。その中で「都市整備部で各種の施策を推進してい全体のモチベーシ ョンをいかに高めるか」が課題とする丸岡耕平部長は、事業の実施にあたり、 より一層の「選択と集中」が必要とする。その丸岡部長に、現在の取り組みや 今後の方向性などについて聞いてみた。
(編集部 渡辺真也)
【写真】大阪府都市整備部 丸岡耕平部長 ◇◇◇◇◆ モチベーション維持が課題 ◆◇◇◇◇ 〜〜〜〜〜 低入札 品質確保、下請保護に努力 〜〜〜〜〜
――まずは今年度の取り組み状況について。
「行財政改革による都市整備部全体のモチベーションが課題となっています。建設事業費が削減する中、士気 の低下を防ぐため、ことあるごとに現場へ顔を出しました。ちょっとしたことですが、それにより若手職員の 励みになればと考えています」 昨年2月、府は赤字構造からの脱却を目指して平成22年度を目標に「行財政改革プログラム」を策定。こ の中で施策の再構築として、建設事業費は約50億円の削減を打ち出している。 「ただ、ハード面では、第2名神や水都再生など、課題はあるにしても進んではおります。来年度に向けて は、今まで積上げてきた実績をしっかりと継続することで、さらなる選択と集中を進めていきます」
――来年度はやはり厳しくなる。
「行財政計画により来年度建設事業費は10%減、20年度は15%減となります。これらについては、事業 費縮減や工期短縮、また落札金額の差額活用など、いろんな要素を取り入れながら、金額は減るにしても工夫 しながら事業量は減らさないような努力はしていきます」
――今年度は総合評価方式の試行も行いましたが。
「昨年来、低入札が続いていますね。業界側は勿論、官側も見過ごすわけにはいきません。このため制度を積 極的に検討していかなければと思っていますし、総合評価もそのひとつで今年度は3件の工事で試行しまし た。その中では技術面に対する評価、加算点が低すぎるように感じました」 各社の技術力が拮抗する中では、どうしても価格競争になるため、「技術点を上げるような仕掛けが必要」 とし、低入札に対応した制度を契約局と協議したいーとの意向を示す。
――このほか施工計画事前審査型入札も実施されている。
「これは効果があります。価格競争ではありますが、目的は不良不適格業者をふるい落とす制度で、それなり に効果は出ております」 これら現行の入札制度に対する課題として丸岡部長は、「業務量の増加」を上げる。「事前審査をで不良業 者を落とし、総合評価で優良企業を選ぶということに加え、低入札調査も実施しなければならない。この3段 階を実施することで時間と手間がかかり、組織的な運営に影響がでる恐れがあります」と懸念を示す。 「制度改革を考える反面、どうやって省力化するかを考える必要もあります。その対応のひとつにアウトソ ーシングがあります。その流れの中で、品確法絡みで総合評価方式の実施等の取組費用に対する補助制度がで きた事もあり、コンサルタント等に委託する方向になります」
〜〜〜〜 低入札続きは「特異な事態」〜〜〜〜〜 ――現在、一番問題になっている低入札問題ですが。
「品質の確保と下請保護です。品質管理については我々が厳しくチェックしますが、下請けを泣かさないよう な適正価格での契約を業界にはお願いしたい。低入札調査はやっておりますが、調査時に提出される元請が下 請けに払う金額が本当に適正かどうか、その判断が難しい部分もありますが、ただ、下請けを泣かすようなこ とはやめていただきたいですね」 昨年来から続く低入札を丸岡部長は、「特異な事態」とする。談合防止、コンプライアンス遵守を業界側が 唱える中、仕事が減る中では、人を遊ばせるよりは赤字でも仕事をとるーと、「悪循環に陥っている」と見 る。 「下請けを泣かさず品質を確保できる価格で競争していただきたいし、官側も施策によってそういう形にな るように誘導しなければなりません」 ――低入札は地元中小業者にとっては死活問題です。
「都市整備部では、最低制限価格と低入札調査制度を設けています。企業体力のある大手業者の対象工事につ いては低入札調査でもいいでしょうが、体力のない業者に対する工事については業者を保護する観点からも、 大阪方式といった仕組みが提案できないものかと、来年度までに方向性が求められればと思っています」