循環型社会形成の一翼を担い続けて4半世紀―。近畿2府4県の大阪湾圏域で 発生する廃棄物の適正な処理および埋立造成による港湾の秩序ある整備を目的 として1982年に設立された大阪湾広域臨海環境整備センターが3月1日、設立 25周年を迎えた。長期・安定的に広域の廃棄物を処理するため、海面に最終処 分場を確保し、埋め立てた土地を活用して港湾機能の整備を図ることを目的と して生まれた「大阪湾フェニックス計画」を実現していくための拠点となる尼 崎沖埋立処分場での廃棄物投入を1990年1月に開始して以来、1992年1月に泉 大津沖埋立処分場、1991年12月に神戸沖埋立処分場の供用を開始するととも に、大阪湾沿いに九つの搬入基地を設けて廃棄物の受入を行い、生活環境の保 全ならびに地域の均衡ある発展に貢献している大阪湾広域臨海環境整備センタ ー。2005年度末現在の廃棄物等の受入総量は、約7,100万トンにも達してお り、今後も大阪湾圏域の177市町村・約2,000万人の負託に応えていくが、それ への新たな拠点となる大阪沖埋立処分場の建設についても順調に進捗するな ど、廃棄物の適正処理を長期・安定的に継続していくための態勢には揺るぎな いものがある。廃棄物の広域的な最終処分と港湾機能の充実という全国唯一の 先進的事業に邁進し、循環型社会の実現に大きな役割を果たしていく大阪湾広 域臨海環境整備センターでは、設立25周年という大きな節目を機に、さらに事 業の効率化に努め、?環境の世紀?にふさわしい大阪湾圏域の保全ならびに活 性化を先導していく。
〜「大阪湾フェニックス計画」を力強く先導〜 広域処理対象区域は近畿2府4県の117市町村 我が国でも有数の人口集中および産業集積地域である近畿圏においては、日常生活や産業活動に伴う廃棄物が 多量に発生している。このため、各自治体などでは、廃棄物の減量化、再利用の促進に努めているものの、最 終処分しなければならない焼却灰等が依然として残るという課題を抱えている。 しかし、近畿圏の内陸部は、既に高密度の土地利用が進んでおり、個々の自治体などが廃棄物の最終処分地を 確保することは極めて困難な状況にある。 一方、大阪湾圏域の各港湾では、背後の都市の健全な発展と活動 を支えるため、港湾機能および都市機能の整備拡充を図る必要があり、埋立による新たな用地の確保が求めら れている。 こうした背景を踏まえて長期・安定的に広域の廃棄物を処理するため、海面に最終処分地を確保し、埋め立て た土地を活用して港湾機能の整備を図ることを目的として生まれたのが「大阪湾フェニックス計画」。 ▽大阪湾圏域の広域処理対象区域から発生する廃棄物を適正に処理し、大阪湾圏域の生活環境の保全を図る ▽港湾の秩序ある整備により、港湾機能の再編・拡充を図る ▽新たな埋め立て地を活用し、地域の均衡ある発展に寄与する ――ことを目指しながら、廃棄物の適正処理と都市の活性化という2つの社会的要請に応えていくための指針 で、快適な都市環境を守り、新しい大地を創造していく。 資源循環型社会の形成に向けた「大阪湾フェニックス計画」を先導していく大阪湾広域臨海環境整備センター は、1981年に制定された「広域臨海環境整備センター法」に基づいて1982年3月1日、焼却灰や産業廃棄物の 処分場に悩んでいた近畿2府4県159市町村と4港湾管理者の出資を受けて設立され、3月1日に設立25周年 を迎える。 1985年12月に全国で初めて「広域臨海環境整備センター法」に基づく厚生・運輸両大臣(当時)の認可を受け た「大阪湾圏域広域処理場整備基本計画」により、尼崎沖埋立処分場において廃棄物の受入を1990年1月から 開始して以来、快適な都市環境を守りながら新しい大地の創造に邁進している大阪湾広域臨海環境整備センタ ー。1992年1月には泉大津沖埋立処分場、2001年12月には神戸沖埋立処分場についても供用を開始し、廃棄物 の適正処理と都市の活性化という2つの社会的要請に応え続けている。 設立から4半世紀を経た現在における大阪湾広域臨海環境整備センターへの出資団体は183団体、四港湾管理 者に膨れあがるとともに、広域処理対象区域についても、近畿2府4県の177市町村へと拡大。「大阪湾フェ ニックス計画」への依存度は一段と高まりを示しており、平成17年度末までに大阪湾圏域から発生した約7、 100万トンの廃棄物等を受け入れている。 しかし、21世紀は「環境の世紀」と言われているように、循環型社会の形成に向けた廃棄物の減量化、リサイ クルに関する各施策が積極的に進められているが、処理された廃棄物を適正に最終処分できる処分場の確保が 重要な課題として残ることに変わりはない。 このため、快適な都市環境を守りながら新しい大地を創造してきた大阪湾広域臨海環境整備センターでは、 2001年12月から神戸沖埋立処分場の受入を開始するとともに、姫路基地も併せて開設。六甲アイランドの沖合 約1.5?(神戸市東灘区向洋町地先)に位置する面積88ha、埋立容量1,500万立方mの管理型処分場である神戸 沖埋立処分場では、大量の廃棄物を迅速に処理するため、ベルトコンベアによる輸送方式を採用。フローティ ングコンベヤ先端部のスプレッダー船により、廃棄物を薄層に埋め立てていき、埋立完了後には港湾関連用 地、交流拠点用地ならびに緑地として利用する計画で、2007年2月末で約43%の埋立が完了している。 〜快適な都市環境を守り新しい大地を創造〜 廃棄物の適正な処理を通じて近畿2府4県の生活環境の保全に大きな役割を果たしている「大阪湾フェニック ス計画」における新たな処分場として大きな期待が寄せられている大阪沖埋立処分場の建設地は、大阪市が大 阪港の夢州沖で計画している大阪港新島地区の面積約300haのうち、沖合先端部に当たる約95ha。埋立処分容 量約1,400万立方m(一般廃棄物770万立方?、産業廃棄物・災害廃棄物350万立方?、陸上残土280万立方?) の管理型処分場で、西護岸、北護岸、東護岸、南護岸で構成される埋立護岸の総延長は約4,400mに達する。 自然条件や将来の土地利用計画を踏まえて決定したそれぞれの護岸構造のうち、大阪港の最先端部に位置する 西護岸および北護岸には、関西国際空港で海域環境に対する改善効果が実証されている傾斜型護岸型式を採 用。廃棄物による埋立終了後には、市民が海と親しめる環境創造型の施設が整備される予定となっている。 東護岸は、大阪市が大阪港の港湾機能を維持・向上するために不可欠な浚渫土砂処分場を整備する区画との境 界に当たる護岸で、将来は埋立地の中に埋没することから、土地利用に支障を来さない鋼製セル式護岸型式を 採用。また、北護岸、西護岸と同様に、波浪条件の厳しい場所に設ける南護岸については、大阪市が将来、こ の護岸のさらに南側に防波堤を設置し、岸壁として利用する計画であることから、護岸前面の水深が確保でき るとともに、護岸からの反射波の影響を軽減できるスリット式の直立護岸型式を採用することとした。 一方、大阪沖埋立処分場は、水と接触すると汚れが流出する恐れがある管理型廃棄物を受け入れる処分場であ るため、通常の埋立護岸とは異なり、埋立地の内水と外海水との交換を防ぎ、周辺海域の水質の汚染を防止す ることが強く求められている。また、大阪湾の海底には、十分な遮水機能を有する粘土層が存在し、管理型廃 棄物埋立処分場としての優れた立地特性を有しているものの、その一方において軟弱な粘土層の上に地震時で も崩壊しない強固な廃棄物埋立護岸を建設するためには、護岸建設位置直下にある粘土層の地盤改良を行う必 要があった。 このため、自然条件や将来の土地利用計画を勘案して構造を決めた各護岸では、護岸を安定させる地盤改良工 法として、締め固め砂杭を採用。しかし、同工法の採用によって遮水機能が低下しないように、地盤改良範囲 背後の一部に未改良層を残し、護岸が概成して陸地化した後、継ぎ手部に遮水処理を施した鋼矢板 をこの未改良層に打設して遮水機能を確保することとした。 こうした万全の対応策を講じるとともに、港湾貨物の輸送や漁業生産活動をはじめとする港湾およびその周辺 海域における活動との調整に十分な配慮を加えながら精鋭施工陣が安全第一に推進している工事が軌道に乗っ たのは平成13年11月。北護岸と東護岸ならびに西護岸の一部の基礎工(合計10工区)が先陣を切ってスタート し、2002年8月まで敷砂工、地盤改良工、締め固め砂杭の打設などを続けた。また、これに引き続いて推進し た各護岸の基礎工および本体下部工についても淀みないペースで進捗し、今度中には全体総延長の80%の護岸 が概成する見込みとなっている。 〜大阪沖埋立処分場 護岸慨成に向け着々〜 ?ポスト神戸沖?として大きな期待を集める大阪沖埋立処分場建設工事を先導する護岸基礎工では、専用の砂 撒船を使用して敷砂工を推進し、この後、サンドコンパクション船とサンドドレーン船による地盤改良工を行 ってから所定の下端深度までケーシングパイプを打ち込んで海底地盤下に砂杭を打設。一方、本体下部工にお いては、事前深浅測量をはじめとする準備工ならびにGPSの精度確認や自動潮位計の測定値確認についての キャリブレーションが完了した後に盛砂工に着手した。 大型の船体とアンカー設備を備え、優れた威力を発揮するトレミー式砂撒船を使用し、現地盤を乱さないよう に薄層(約1m)で散布していく盛砂工については、 ?GPSにより本船を施工位置に誘導する ?現地盤高を潮位データを基にオートレッドにより測定する ?砂撒船は送られた砂を散布管によって所定の範囲に散布する ?オートレッドにより敷砂高さを確認しながら所定の高さまで仕上げる ――という施工手順で濁りの拡散防止に万全の注意を払いながら推進。また、これに引き続いて施工する捨石 の投入は、ガット船を用いて展開し、潜水士によるレッド確認を行いながら所定の断面まで仕上げる。 ゆとりと潤いのある快適な都市環境を創出していく上において欠かせない新たな埋立処分場の建設は、護岸の 概成という大きな節目を迎えてからも環境保全に留意しながら安全第一に進められ、平成20年度末の受け入れ 開始を目指していく。