
寝屋川流域総合治水対策の一環 浸水被害の軽減に大きな役割を果たす貯留施設の建設に弾みー。大阪府が、寝屋川流域 総合治水対策の一環として、大東中央公園(大東市深野)の地下に設ける大東中央調節 池の本体工その2工事がこのほど完成した。大雨時の雨水の一部を一時的に貯留して周 辺地域の浸水被害の軽減を図るために建設を進めている施設で、貯留量は5万6,900立 方m。前段の本体工工事からバトンを受け継ぎ、本体工その2工事の施工を担当した近 畿建設(株)では、品質の向上を目指しながら調節池本体、取水・排水施設工事などを 慎重に推進し、安全で快適なまちづくりの一翼を担う貯留施設の全体完成に弾みをつけ た。
〜大東中央公園の地下に設置〜 浸水被害の軽減に寄与する貯留施設 大阪市東部を含む12市(大阪市、守口市、枚方市、八尾市、寝屋川市、大東市、柏原市、藤井寺市、東大阪 市、四條畷市、交野市、門真市)にまたがる寝屋川流域の面積は267.6平方?(東西約14?、南北約19?)。 東側は金剛生駒国定公園に指定されている生駒山地、西側は大阪城から南に伸びる上町台地で区切られてお り、北側と南側については淀川と大和川に囲まれている。 「寝屋川」、「第2寝屋川」、「恩智川」などの主要河川からなる寝屋川流域の約4分の3に当たる地域(主 に中・下流部)は、地盤が河川水面より低い低平地となっており、降った雨はそのままでは河川に流入しない のが現状で、このような内水域においては、降った雨は一旦下水道によって集められ、ポンプにより河川に排 水している。 また、大阪市に隣接するという地理的条件に恵まれているこれらの地域は、戦後の産業・経済の発展に伴って 市街化が急速に進展し、現在へと至っている。大部分が低平地であるとともに、流末出口が寝屋川の京橋口だ けしかないことに加え、昭和30年代からの急激な都市化の発展によって浸水被害を非常に受けやすい寝屋川流 域では、治水対策事業が古来から弛みなく進められ、1954年に寝屋川改修全体計画(第1次計画)、1976年に 同(第2次計画)がそれぞれ策定された。 第1次計画では新川開削と河道拡幅、第2次計画では河床の掘り下げや遊水池(貯留施設)ならびに放流施設 (寝屋川導水路など)の整備を推進。しかし、寝屋川流域の都市化は著しい進展を続け、この後も内水域にお いては河川へ排水するポンプの機能以上の雨が降った場合に「内水浸水」といわれる新たな形態の浸水被害が 多発している。このため、大阪府では、これまでの第二次計画に内水域の治水計画(河川、下水で行う放流・ 貯留施設の整備および行政、民間で行う流域対応施設の整備)を盛り込む形で計画を変更した寝屋川改修全体 計画(第三次計画)を1988年に策定。寝屋川流域全体の治水安全度を確保するため、流域を面で防御する「流 域基本高水」という新しい概念を導入し、そのピーク流量を寝屋川の京橋口地点で2,700立方m/秒に設定し た。 水害に対して安全で快適な街づくりを行うため、河川や下水道の整備を進めるとともに、流域における保水・ 遊水機能を人工的に取り戻そうという考え方に基づき、河川改修や治水緑地・流域調節池などの貯留施設、地 下河川などの放流施設を整備していく寝屋川流域総合治水対策。その一翼を担う流域調節池は、水路や下水道 に流しきれない雨水を一時的に貯留し、周辺地域の浸水被害を軽減させるための施設で、主に公園や駐車場な どの地下空間を活用して建設。これまでに、香里西、大正川、志紀、三ツ島、布施駅前、南郷、長瀬、御幸 西、中鴻池、一番町、八尾広域防災基地、萱島、大久保、東諸福、八戸の里公園の各調節池が完成している。 本体工その2工事がこのほど完成した大東中央調節池は、大東市深野の谷田川と鍋田川の合流点部に位置する 大東中央公園の地下に設ける調節池で、寝屋川北部流域下水道の大東幹線二から大雨時の雨水の一部を取水 し、主に大東市中央部の浸水被害の軽減を図るもの。貯留量は5万6,900立方m、形状寸法は南北80m×東西 80m(50)×深さ18.4mで、貯留した雨水については河川水位が低下した後に鍋田川へ放流する。 京橋口換算流量2,150立方m/秒から2,400立方m/秒(基本高水流量)の間の洪水を処理するための基幹施設 として大きな役割を果たす流域調節池の整備は、180万立方mの貯留量確保を目指し、今後も着実に進められ ていくが、その一翼を担う大東中央調節池の供用開始予定は2008年の出水期となっており、今後は建築・設備 工事などを実施する。 〜近畿建設が高品質施工〜 万全の近隣対策・環境保全にも全力 大雨時における浸水被害の軽減に大きな役割を果たす大東中央調節池は、2008年の出水期の供用開始を目指し て本体築造工事が計画的に進められてきたが、それへの弾みをつける本体工その2の施工を担当し、高品質に 完成させたのは近畿建設?。山鹿正幸所長をはじめとする同社ならびに各協力会社の有能なスタッフが一丸と なって工事に取り組み、多くの関係者から寄せられていた信頼に応える高精度施工を達成した。 前段工事の大東中央調節池築造工事(本体工)を引き継ぎ、調節池本体の築造(頂版の1部1,166?、管廊お よびフラッシュゲート室)、仮桟橋撤去(672?)、取水施設・配水施設を築造する一級河川寝屋川大東中央 調節池築造工事(本体工その2)が軌道に乗り始めたのは昨年6月。取水施設の締切鋼矢板の打設から着手 し、引き続き構造物基礎地盤の改良と既設水路近接防護を施工した。 このうち、構造物基礎地盤の改良には、低変位超高圧噴射撹拌工法(Ldis工法)を採用。同工法は、施工 に伴う地盤の変位を抑制するとともに、軟弱粘性土にも対応可能なもので、N値が0から5だったこの現場に おいても大きな威力を発揮した。なお、改良仕様は、改良径1.60(噴射時間t=4.0分/m)、設計強度500K N/?、噴射流量130リットル/分、固化材混入率142?/立方m、水・固化材比W/C1・5となっている。 地盤改良が完了してからは、基礎杭(PHCパイル、径600から450?)を中掘り拡大根固め工法で打設。杭打 ち機の搬入・搬出は、現場への進入道路が狭く、大型トレーラーの離合が出来ないため、一般車両の通行を禁 止して深夜に行うこととし、搬入は8月5日、搬出は同月30日にそれぞれ実施した。 この後は、掘削、土留め支保工、躯体工が淀みないペースで進捗。先月3日にマンホール部のコンクリート打 設が完了したことにより、取水施設は無事に完成した。 一方、調節池本体工事では、頂版上部に構築する東側管廊コンクリートを7月14日に打設。引き続き、フラッ シュゲート室コンクリートを8月11日、9月8日、11月10日の三回に分けて打設し、南側管廊コンクリートに ついては今年の1月31日に打設した。また、この間の8月7日から10月10日にかけては、調節池内部の底版水 勾配調整コンクリートを六回に分けて打設し、仮桟橋解体工事(11月18日から12月4日まで)に引き続いて行 った型枠支保工ならびに鉄筋組み立てを経て頂版コンクリートを四回に分けて施工。1月29日に最終のコンク リート打設が完了してからは、調節池内部の資材搬出用開口部を3月8日に閉塞し、同月15日には頂版防水工 も完了するに至った。 大東中央調節池築造工事のコンクリート工事においては、地元との協議により、1日に場内へ搬入できる生コ ン車の台数が制限されていた。このため、コンクリート打設に当たっては、施工敷地外に圧送を行うヤードを 設け、施工敷地内まで約260m(水平換算距離約300m)の圧送設備(コンクリート圧送管=径200?、長さ260 m×2系列、ポンプ能力=容量110立方m/時)を設置してコンクリートを圧送。圧送されたコンクリート は、施工敷地内に設けた中継所でミキサー車に一旦受け取り、打設箇所ポンプ車まで運搬して打設した。 このほか、排水施設工事については渇水期に施工。まず、鍋田川を大型土嚢などで締め切り、護床ブロックを 設置して旧護岸を撤去。その後、放流工下部の施工、排水管の設置、放流工上部の施工、パラペットの嵩上げ 等の復旧工事を行い無事に完了した。 山鹿正幸所長の話 北・西面側が谷田川、南面側が鍋田川に接するとともに、周囲を住宅地に囲まれた大東中央調節池築造工事 (その2)の施工場所は、軟弱な地盤を造成した地域であり、生活環境の保全についても留意する必要があっ た。このため、工事用車両および建設重機の走行・作業中の振動対策、コンクリート圧送時の振動対策にはと りわけ神経を使って作業を推進しました。また、第三者災害の防止や工事用車両事故防止のため、現場の出入 口付近と現場への進入路である府道大東四條畷線西村橋交差点付近での安全確保には特段の注意を払いまし た。工事期間中は、地元自治会と締結した「確認書」に基づき、工事作業、安全対策、環境対策などと真摯に 取り組み、このほど工期内竣工を無事に迎えることができました。これも偏に、関係各位のご支援・ご指導、 近隣の方々のご理解・ご協力の賜であり、心から感謝申し上げます。