快適で安全な道路創出への重要構造物 大きな節目を迎えた喜びが、トンネル空間に爆発した―。兵庫県が、線形不 良区間の解消ならびに交通安全の確保などを図ることを目的として推進して いる一般国道373号円光寺バイパス道路整備事業における重要構造物となる円 光寺トンネルの貫通式が先月27日、約70人の関係者が出席して盛大に催され た。
落石危険区間でもある兵庫県佐用郡佐用町下上月から円光寺に設ける延長153mのもので、施工は吉田・神崎 特別共同企業体が担当。発破及び機械掘削を併用するなど、地山に応じた対応を図りながら安全第一に掘削 を続け、待望の貫通を果たした同JVでは、今後も高品質を確保しながら覆工などを進め、10月末の完成を 目指していく。 〜線形不良区間の解消などに寄与〜 兵庫県赤穂市内の国道2号との接続点を起点とし、途中、中国縦貫自動車道の佐用インターチェンジと連結 した上で、鳥取市内の一般国道29号との接続点を終点とする一般国道373号(延長約107?)は、兵庫県西部 の瀬戸内臨海部と鳥取県東部の日本海沿岸部を南北に結ぶ重要な幹線道路。兵庫県内においては、西部地域 の農村地帯に点在する多数の集落を結ぶ生活道路並びに中国縦貫自動車道へのアクセス道路として西播磨地 域の活性化に寄与している。 しかし、円光寺地区は、蛇行する佐用川と急峻な山に挟まれた地形であることから急カーブが連続するとと もに、冬季には路面が凍結するなど、交通の難所となっており、交通事故も多発している。このため、兵庫 県では、線形不良区間の解消ならびに交通安全の確保などを図ることを目的とする国道373号円光寺バイパス 道路整備事業を推進。延長は1,200mで、現道拡幅、円光寺橋、円光寺トンネルの建設などによって快適で安 全な道路を創出する。 それへの一翼を担う円光寺トンネルは、落石危険個所でもある兵庫県佐用郡佐用町下上月から円光寺に設け る延長153mのもので、吉田・神崎特別共同企業体が施工を担当。孝幸所長をはじめとする有能なスタッ フが安全第一に掘削を進め、このほど待望の貫通を迎えた。 二級河川千種川の支流である佐用川沿いに位置する現場において工事が軌道に乗り始めたのは昨年5月。河 川改修(鎌谷川)並びにソイルセメントによる押さえ盛土工での坑口周辺地山の安定などを先行させた上で 終点側(下上月側)の坑口付けを行い、9月中旬から掘削に着手した。 この終点側には上月浄化センター、起点側(円光寺側)坑口の両サイドには民家が多数隣接しているため、 発破掘削は電子雷管を用いた多段発の制御発破により、起終点で振動計測を行いながら昼間のみに施工。な お、防音扉が使用できるまではブレーカーによる掘削を推進したが、岩盤が想定以上に硬質であったため、 日進がわずか0.3mとなる日が続いたことから、発破衝撃に耐え得る防音扉の設置を急ぎ、地元の理解を得た 上で昼方のみの発破掘削体制を整えた。また、機械掘削延長を最小限にとどめるため、振動測定結果に基づ く制御発破を行い、当初設計の発破掘削区間(64.0m)を102.0mにまで延長。この後に行った機械掘削には 今年の1月29日から着手し、昼夜2方で施工した。 〜地山に応じ発破・機械掘削を併用〜 振動・騒音対策などにも万全の対応 追加ボーリング調査及び発破掘削時の地山状況・切羽におけるコア採取による一軸圧縮強度試験結果などに より、この機械掘削工法は、当初設計の300kw級ロードヘッダーでは困難であることが見込まれたため、吉 田・神崎特別共同企業体では、発注者の承諾を得た上で割岩工法での施工を推進。この間の2月10日には地 元住民が約200人も参加した現場見学会が開催され、「円光寺バイパスに対する地元の関心の高さをひしひし と痛感した」(濱所長)。 割岩工法による機械掘削はこの後も順調に進捗。しかし、貫通予定位置から10?手前で到達側の振動・騒 音が共に大きくなったため、夜間作業を中止して昼方施工で対応。近隣への迷惑防止に特段の注意を払いな がら慎重に最終掘削を進め、このほど無事に貫通を迎えた。 一方、環境保全対策としては、トンネル工事で発生する工事用水の放流先である千種川に清流特有の生物が 生息しているため、工事による濁水の処理に対する管理には万全を期していた。特に、機械掘削になってか らは、穿孔・割岩作業が1日の大半を占め、油圧系統の故障が頻繁に発生するようになったので、坑内から 濁水処理プラントに到る間にオイルトラップを何カ所にも設けて作動油・潤滑油の流出を防いだ。 兵庫県当局からも県内業者同士のJVによる施工として注目を集めているこの工事も無事に貫通を迎え、今 後は、トンネルの2次覆工、坑内付帯工・コンクリート舗装及び坑口両側の明かり部の整備を10月末の完成 を目指して安全第一に進めていく。