安全・安心なまちづくり 7月16日に発生した新潟県中越沖地震では、改めて地震のもたらす被害の大 きさが明らかになり、地震に対する備えの必要性を痛感させられた。阪神・淡 路大震災以来、国はじめ各地方自治体では、災害対策の強化を打ち出してい る。 大阪府では、今年5月、府庁本館を耐震化により保存・活用することを決め た。
大阪府庁舎の整備については今年5月、「府庁本館の建替えについての基本的な考え方(案)」がまとめら れ、耐震補強による保存・活用を図っていくことが決まった。
〜〜〜 東館・免震工法、西館・在来工法で 〜〜〜 府庁本館は、大正15年(1926年)に、RC造一部SRC・S造地下1階地上6階建て、延床面積約3万 4、000平方?の規模で竣工。大正12年に発生した関東大震災を受け、当時としては最新の耐震設計を採 用、その後、昭和30年に西館3階、同34年に4・5階を増築した。
庁舎の建替え論議が起きたのは昨年2月に実施した耐震診断の結果、「震度6〜7の地震に対して倒壊か崩壊 の恐れあり」と診断されたことに始まる。 この結果を受け府では、同4月に補強工事に関しての「大阪府庁舎本館活用計画に関する調査」と,建替え等 に関する「大阪府庁舎・周辺整備のあり方に関する基礎調査」を、それぞれ実施した。
補強工事では、東館と西館を分け、在来・制震・免震の3工法について、補強後の強度や施工性、コストなど を調査・検討。建替え調査では、庁舎の規模や機能、PFI等の導入可能性、庁舎区域の土地活用などが検討 された。
調査のうち、建物劣化度に関しては東館は構造耐力を損なう鉄筋の腐食はなく、劣化が進行っしないよう適切 な維持管理の実施により「50年以上の使用は可能」とされ、西館でも同様の結果が得られた。
これらの調査結果を基に、昨年6月から9月にかけて、府議会庁舎整備検討委員会が設置され、改修か建替え を中心に庁舎整備の方向性について議論を重ね、その過程で明らかになった問題点や疑問点についての報告書 をまとめ、知事に提出。
報告書では、本館の保存・活用方策の検討と歴史的・文化的価値等の検証、周辺地域に適合した土地活用によ る庁舎と周辺整備の具体的な全体像、民間活力によるまちづくりプラン、新庁舎整備と府の行財政計画との整 合性−−−などの課題が指摘された。
委員会では、これら検討結果を踏まえ、「多角的な比較検討により今後の方向性を決める必要がある」とし、 府に対して報告書に示した諸課題について外部からの意見を採り入れながら、さらに精度の高い調査・検討を 深め、総合的に判断しうる条件を整えた上で、具体的な考え方のとりまとめを求めた。
これら報告書を踏まえ府では、基本的な考え方をまとめたもの。その中では、本館は近代大阪を代表する公的 建築物であり、歴史的価値が極めて高く多くの府民からも親しまれ、老朽化したとはいえ、最近の建築物には ない魅力を有していることや、建替えの可能性ではPFI手法等を活用しても新たな庁舎建設には700億円 以上の費用がかかるなど、財政負担が大きいとされた。
これらを総合的に勘案した結果、「本館は保存し、府の貴重な財産として有効活用するため、耐震補強により 引き続き庁舎として使用することが適当」と判断し、耐震補強により保存・活用することとなった。
耐震補強については、東館は建物を使用しながら工事が可能な免震工法を、西館は低廉で使用ながら工事の行 える在来工法を採用することとしている。府では今後、実施する設計業務において、工事費の縮減や工期短縮 に努めながら、早期の実施を図っていくとしている。
また、庁舎の建替え議論にあたっては、社日本建築家協会近畿支部をはじめ、業界団体や民間有識者らからも 保存を望む要望書や提言などが寄せられていた。