
施設の長寿化・有効活用など積極的に推進 地球温暖化防止対策などにも全力 ……………………………………… 1972年に事業着手し、現在までに桂川右岸、木津川、宮津湾、木津川上流お よび桂川中流の5流域で事業を進めている京都府の流域下水道。京都府内の 人口約260万人のうちの約3割が流域下水道の区域内で暮らしており、2006年 度末現在における普及率は88.0%に達している。しかし、京都市を除く市町 村の普及率は、74.9%にとどまっているのが現状で、今後も関連市町村と協 力して普及促進に努めていく方針。
また、豊かさを実感できる生活環境づくり、浸水のない安全で安心なまちづくり、健全・良好な水環境の創 造など、下水道のあり方が大きく様変わりしている近年においては、京都府民の下水道整備事業に対するニ ーズも多様化する傾向にあるため、「府民と下水道」、「地域と下水道」、「環境と下水道」の3つの調和 を図ることを基本理念とする「ー澄みずみ京都府―いろはプロジェクト21(京都府未来下水道計画)」に基 づき、事業の進捗をさらに図っていく。 一方、下水道分野における地球温暖化防止対策や汚泥の有効活用施策を一層推進するため、浄化センター施 設を民間に提供する「流域下水道共同研究実施要綱」を2005年度に策定し、これまで3件の研究を行ってお り、今年度は「下水道施設の安全性向上に資する技術開発」等3課題を指定して公募している。また、これ まで整備してきた流域下水道の施設・設備を府民の資産としてとらえ、安全・良好な状態で次世代に継承す るとともに、施設の有効活用ができるように、アセットマネジメントの考え方を踏まえた「京都の流域下水 道・長寿・循環再生プラン」を2006年12月に策定した。 ▽流域下水道が提供する府民へのサービスについて、サービスの視点ごとに目標を設定するとともに、その 達成状況をわかりやすい指標で開示し、評価する仕組みづくりを行う ▽予防保全により、より良好な状態で施設や設備を長寿化するとともに、限られた予算で最大の効果が得ら れるよう、アセットマネジメントの考え方を導入し、5つの流域下水道ごとにアセットマネジメント実施計 画を策定する ▽高度処理の推進をはじめ、安定的な水環境・水循環の保全を図るための施策を推進する ▽府民や流域関連市町が相互に連携することができるよう、「情報発信」から「情報共有」への転換を実現 する ―という4つの基本方針を掲げている「京都の流域下水道・長寿・循環再生プラン」。昨年度には実施計画 を策定するためのガイドラインを策定し、今年度内にそれをもとにした各流域下水道における実施計画を策 定する方針。なお、2008年度以降については、実施計画を実行に移すとともに、既存の計画の見直しを含 め、PDCAサイクルによる実施計画の充実を図っていくことにしている。 _________________________________________________________________________________________________ 桂川右岸流域下水道 ……………………… 京都府における最初の流域下水道として1972年度から汚水事業に着手した桂川右岸流域下水道の対象となる のは、市街地が連担している右岸地域の京都市、向日市、長岡京市および大山崎町で、1979年度から供用を 開始。その計画概要は、処理面積が5,156ha、処理人口が36万2,000人、処理能力水量が22万5,100立方m/日 となっている。終末処理場となる洛西浄化センターは、長岡京市勝竜寺(敷地面積17.3ha)に設けられてお り、処理能力は19万8,900立方m/日。関連公共下水道の整備によって増加する流入下水量の伸びに合わせ、 水処理施設、汚泥処理施設の増設、高度処理施設の整備を進め、1998年度に一部高度処理施設の運転を開始 した。 また、1996年度には、下水道資源の有効利用を図るため、汚泥焼却灰から「エコ・京レンガ」を製造する焼 成炉施設の運転が始まるとともに、水処理施設上部を利用した京都府立洛西浄化センター公園が開園。以 来、乙訓地域や京都市南部地域などにおける貴重なオープンスペースとして幅広く府民に活用され、地域ス ポーツの振興に寄与しているが、平成16年8月に「芝生球技場」が新たに開園したことにより、サッカーな どの競技が緑豊かな芝生上で楽しめるようになるなど、さらなる魅力が加わり、利用者からも好評を博して いる。なお、幹線管渠約16.8?は、1982年度に全区間を供用している。 一方、1995年度に京都市、向日市、長岡京市の3市の区域を対象とした雨水事業に着手した同流域下水道に おいては、現在も地下の施設・設備が主体となる雨水事業を計画的に推進。これら3市にまたがる1,838haの 区域の雨水排水・浸水対策として、雨水が流入して増水した川から水を取り込んで貯留するための延長約8.8 ?、容量約25万立方m(2002年8月の計画変更により、現在は全体容量を約20万立方mに縮減) の地下トンネルを構築する。 このうち、北幹線1号管渠(延長約935m、内径8.5m)については、2001年6月に供用を開始。また、これ に引き続いて着手した北幹線2・3号管渠(延長約3,993m)については、平成16年度末に発進立坑が完成 し、現在、2010年度の完成を目標に管渠本体のシールド工事を継続して実施している。「いろは呑龍トンネ ル」とネーミングされたこの事業に対する関心を高めるため、地下トンネルの貯留履歴を含む貯留状況につ いての情報をホームページや携帯電話からアクセスして知ることができるシステムが平成17年6月に構築さ れたほか、見学会なども開催して?平成の乙訓雨退治?をアピールしていく。 木津川流域下水道 …………………… 都市化の進展が著しい木津川下流域の京都市、宇治市、城陽市、八幡市、京田辺市、木津川市(従来の山城 町)、久御山町、井手町の六市二町を対象とする京都府二番目の流域下水道。計画概要は、処理面積 6,568ha、処理人口41万9,300人、処理能力水量28万2,000立方m/日となっており、1985年度に供用を開始し た。 八幡市八幡(敷地面積約20.3ha)に設けられている洛南浄化センターの現在における処理能力は、12万9,450 立方m/日。関連公共下水道の整備によって増加する流入下水量の伸びに合わせて水処理施設、汚泥処理施 設の増設ならびに高度処理施設の整備を進めており、1997年度に一部高度処理施設の運転を開始した。今年 度事業としては、今年度末の完成を目指してD系の水処理設備工事を実施している。また、同浄化センター では、地球温暖化防止に寄与する設備を積極的に導入しており、2005年度に消化ガス発電設備および発電時 の排熱を利用した汚泥感想設備の供用を開始。このほかにも、超微細散気装置や太陽光発電設備もとりいれ ている。 一方、幹線管渠については、1979年度から綴喜幹線工事に着手。また、1985年度からは宇治幹線、向島幹線 工事にも着手し、2001年10月に全線約43.8?が完成した。 宮津湾流域下水道 …………………… 京都府の地名を冠した初の国定公園「丹後天橋立大江山国定公園」が今年の8月3日に誕生。新規国定公園 としては、全国で17年ぶりの指定となった同公園は、丹後半島の「海岸と美しい海」、半島中央の「高原と 多様な自然」、大江山を中心とした「連峰と雄大な景観」などを有する表情豊かな公園として地域ぐるみで 自然を守り育てていく取り組みが進められている。 宮津湾流域下水道は、新たに誕生した国定公園内に位置する日本3景「天橋立」を擁する阿蘇海およびこれ に流入する野田川などの水質向上を図ることを主目的として1984年度から事業に着手したもので、1992年度 に供用を開始。その対象となるのは、宮津市、与謝野町(従来の加悦町、岩滝町、野田川町)で、計画概要 は、処理面積1,544ha、処理人口4万5,800人、処理能力水量3万5,000立方m/日となっている。 処理施設となる宮津湾浄化センターは、宮津市字獅子(敷地面積約3.0ha)に設けられており、現況の処理能 力は、1万5,000立方m/日。今年度事業としては、水処理設備の改築更新などの工事を実施している。 一方、1986年度に宮津幹線から工事に着手した幹線管渠(総延長約31.1?)については、2004年度に全区間 の供用を開始している。 木津川上流流域下水道 ………………………… 美しい川面を有する木津川の上流左岸地域である木津市(従来の木津町)、精華町における既存集落ならび に創造的かつ国際的、学際的、業際的な文化学術研究機能の集積を図っている関西文化学術研究都市地域の 生活環境の向上を目的として1987年度から事業に着手し、1999年度に供用を開始した木津川上流流域下水 道。計画概要は、処理面積2,438ha、処理人口15万6,000人、処理能力水量7万2,100立方m/日となってい る。 処理施設となる木津川上流浄化センターは、精華町大字下狛(敷地面積約9.5ha)に設けられており、現在に おける処理能力は2万1,920立方m/日。今年度事業としては、流入水量の増加に合わせ、水処理設備や汚泥 処理設備の増設工事に着手する。また、同浄化センターでは、既存の水処理施設の上部利用として、地元精 華町立体育館やコミュニティセンターを設置しており、地域住民のスポーツの振興、文化交流の場として幅 広く利用されている。 一方、1991年度に相楽幹線から工事着手した総延長11.5?の幹線管渠については、これまでに10.9?が完成 している。 桂川中流流域下水道 ……………………… 京都府のほぼ中央に位置し、昨年の1月1日から南丹市として新たな歩みを始めた従来の園部町、八木町に おいては、JR嵯峨野線の電化・高速化や京都縦貫自動車道の整備に伴い、京阪神大都市圏の定住圏として 都市化が進行している。こうした背景の下、都市の基盤施設として良好な生活環境を確保するとともに、桂 川(大堰川)、園部川等の公共用水域の水質を保全するため、平成元年度に都市計画決定された桂川中流流 域下水道の計画概要は、処理面積803ha、処理人口3万1,400人、処理能力水量約2万2,000立方m/日となっ ている。 1998年度から供用を開始した南丹浄化センターは、南丹市八木町山室(敷地面積約2.9ha)に設けられてお り、現況の処理能力は7、300立方m/日。今年度事業としては、流入水量の増加に合わせ、第3系列目の水 処理施設工事に着手する。一方、幹線管渠(総延長9.8?)については、1992年度から園部幹線工事に着手 し、9.4?がこれまでに完成している。