コンテナ貨物の大型化により大量輸送が可能となった現在において、物流拠 点となる港湾が果たす役割にば大きなものがある。特に大都市港湾は、国際 インフラとしての機能がより強く求められているが、大阪港の整備を担当す る大阪市港湾局では、それら機能の拡充に努めながらも、臨海部発展への施 策も展開している。その港湾局で陣頭指揮を執る川本清局長に、今年度の整 備状況や来年度の取り組みなどを聞いた。 スーパー中枢港湾への取り組み ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 夢洲トンネル、咲洲コスモ2期へ期待 ――まず、今年度の整備状況についてお聞きします。継続事業では夢洲トン ネルが貫通しました。 ■川本局長 スーパー中枢港湾の関連事業として整備を進めており、今年10 月に貫通致しました。今後は沈埋函内部の整備と両側アプローチ部分、特に 夢洲側の道路整備を続けていき、2008年度末の完成を目指しますが、これま でのところは順調に進んでいます。
――夢洲自体の開発は。 ■川本局長 現在C−10、11のコンテナターミナルが稼動しております。C−12については直轄事業となり ますが、今年度中には護岸工事を終え、来年度からは桟橋とヤードの整備にかかる予定です。港湾局では、 ヤード背後地についての整備を行います。また背後地では雨水管の布設にも一部着手しており、それらと併 せ道路整備も進めております。 ――夢洲の埋立造成の状況としては。 ■川本局長 全体を四4に分け、1区では現在も廃棄物を受入ております。2区から4区を港湾局で土地利 用を進めていきますが、4区は先程のコンテナターミナルを整備中で、二区と三区については若干、土砂投 入と地盤改良工事を実施します。夢洲の開発としては、ス―パー中枢港湾として、2009年度にコンテナター ミナルの3バース連続の供用開始を目指します。 ――新島の状況は。 ■川本局長 2008年度内に護岸を締切り、2009年度から廃棄物の受入開始を予定しております。ですから今 年度と来年度にかけて工事もピークになります。今後は東護岸の整備を鋭意、進めていくことになります ね。 ――将来的には、新島と夢洲など既存地区との連絡も、そろそろ考える必要があるのでは。 ■川本局長 まだまだこれからですね。その前に土地利用をどうするかですね。廃棄物処分場ですから土壌 問題など、フェニックス側とも協議する中で解決していかなければならないでしょう。現段階では護岸を締 切り受入ることが課題で、その受入についても今後は排出者負担も考えていくことも大きなテーマとなって おります。 ――スーパー中枢港湾としての大阪港の取り組みと阪神港としての取り組みでは。 ■川本局長 ハード整備はコンテナターミナルや幹線道路を整備しますが、ソフト面では、夢洲コンテナタ ーミナル会社で、荷役作業に関するシステム設計などを進めております。広域連携としての阪神港として は、一開港化として今月から動いております。一開港化のメリットを活かし、実績を積み上げていくことで より効率的な港湾の運用を図れば、また新たなニーズが出てくるといったきっかけになればと思っておりま す。 ――咲洲コスモスクエア二期地区では、昨年から動きが出てきましたね。 ■川本局長 今年になってからも分譲マンションの進出が活発です。入国管理事務所も今月に業務を開始し ます。また、4月と9月には学校もオープンしました。定住人口が増え、学校も年を追って生徒さんが増え てきますと、活気あるまちづくりが期待できます。また、入管事務所によりいろんな外国の人が訪れ、アジ アゲートウェイとしての気運が高まればと思っております。 ――物流面では、取扱量も増えてきている。 ■川本局長 ええ、コンテナ貨物を中心に順調に伸びてきております。毎年6から7%の割合で伸びてお り、神戸港との割合でも、ほぼ拮抗しており、昔ほどの開きはなくなってきてますね。 来年度事業・夢洲トンネル仕上げの時期に ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ 総合評価で技術開発を喚起 ――さて来年度事業についてですが、やはり継続事業が中心になると思われます。今年度予算は約324億円で すが、予算規模としては。 ■川本局長 これからの編成となりますが、継続事業でも大型の案件が多いですから減額することはないと 思います。予算配分では、スーパー中枢港湾への取り組みやそれに到る夢洲トンネルなどのアクセス整備、 新島における廃棄物処分場整備などに重点的な配分となりますね。来年度はこれらの仕上げの時期になり、 ひとつのポイントになります。 ――港湾機能の整備とともに、防災への備えも重要な課題ですが。 ■川本局長 昨年来から東南海・南海地震に対する津波対策を実施しております。対策検討委員会を設置し て被害想定を行い、今年度は、被害想定に沿った減災なり防災なりのアクションプランを作成します。被害 については係留中の大型船の漂流や引き波による岸壁施設の流出、それらに伴う被害をシミュレーションし ております。アクションプランは今年度内には策定する予定です。 ――船舶の漂流により防波堤が破壊され、被害が拡大することも予想される。 ■川本局長 ええ、ですから係留中の船舶については、津波が来る前にいかに港外に避難させるかの港外避 泊についてのマニュアルも作成中です。これら自然災害にはハード、ソフト両面での備えが重要になりま す。 ――そのハード面での備えとしては。 ■川本局長 今後5年以内に大正区や港区の人口密集地域を中心に、防潮堤の耐震補強などを実施してお り、堤防に関しては高さは確保しています。今後も老朽化した施設の耐震化や鉄扉の電動化などを計画的に 進めていきます。ただ、ハード整備は時間をかけてやっていかなければなりませんから、鉄扉が間に合わな いところでは簡易防潮堤を並べるなど、工夫して対応していきます。 ――なるほど。 ■川本局長 今後は、策定したアクションプランをどのように実行するかで、組織の改変やプランに基づく 訓練の実施を、大阪府や関係機関と連携しながら取り組んでいきます。 ――ところで建設業界ではコンプライアンス遵守など信頼回復に向けての努力が続けられておりますが、現 在の業界についてご意見なりがございましたら。 ■川本局長 インフラ整備を担う者として、コンプライアンス遵守をはじめ、工事における品質確保や工期 を守って進めることなど、我々と一緒に取り組んでいかなければなりません。様々な入札契約制度や低入札 問題など課題はありますが、やはり取り決めは守らなければなりません。港湾局でも建設局はじめ関係部局 と共同しなら、総合評価方式やプロポーザル方式などを試行しながら、効率的な発注を目指していきます。 ――技術開発に関しては民間に負うことが大きい。 ■川本局長 そうですね、民間の持つ組織力や蓄積にはやはり大きなものがあります。我々としても協力で きる部分では協力していきます。 ――そういった民間の技術力をきっちりと評価できる仕組みづくりも必要です。 ■川本局長 その仕組みが総合評価方式となるわけですが、我々の方も民間の技術力がより活用できるよう な体制づくりをする必要がありますね。民間の技術開発をさらに喚起することにもなりますから、研究を続 けてまいります。総合評価方式については、今年度から出来るだけ試行することになっており、実現に向け て努力してまいります。 ――本当にそうですね。これからも大阪港ひいては、大阪の発展に向けご尽力下さい。 川本清 (かわもと・きよし)局長の略歴 1974年4月大阪市採用、港湾局勤務、1982年4月港湾局管理部庶務課主 査(財大阪南港環境整備公社)、1985年4月同(財大阪港開発技術協会)、1986年4月企画振興部計画課主 査、1989年4月同計画課技術係長、1991年4月計画局調整部副参事(関西国際空港?)、1994年4月港湾局 企画振興部技術主幹、1996年4月同管理部参事(社大阪港振興協会)、1998年4月同企画振興部開発課長、 1999年4月同部計画課長、2000年4月港湾局副理事(財大阪港埠頭公社)、2004年4月同企画振興部長、 2005年4月同計画調整部長を経て、今年4月から現職に。大阪市立大学大学院工学研究科修士課程修了。 57歳。