‘未来を語ろう 建築・地球、そして宇宙’ (社)日本建築構造技術者協会関西支部(角彰支部長)の主催による支部創 立25周年記念事業‘未来を語ろう 建築・地球、そして宇宙’が17日、大阪 市北区・中之島の大阪国際会議場で開催された。記念事業の第2回目として 実施されたもので、宇宙飛行士の毛利衛さん(日本科学未来館館長)による 基調講演のほか、パネルディスカッションが行われ、支部会員はじめ一般か ら約500人が参加した。 記念事業では、初めに主催者を代表して角支部長が挨拶。角支部長は、耐震 偽装問題による建築基準法改正とそれに伴う混乱など、「建築業界に限らず 明るい話題が少ないが、地球環境問題はじめ、未来を信じる若者を中心に明 るい未来を切り開くことなど、我々の仕事には重要なものがある」とし、こ の事業はそれら未来をテーマとしたものと開催の趣旨を述べ、今後の活動の 上で得るものがあればーとその成果に期待を寄せた。 次いで、日本科学未来館コミュニケーターの江水是仁さんが企画講演を行っ た。江水さんは、「科学に関わる市民との対話、研究者と市民との橋渡しが 自身の役割だ」とし、自らが携わる建築計画の研究分野から見た建築につい てを語った。
江水さんは、生活を支えるインフラには、最先端の科学技術が多く使用されているが、「利用者である市民 はそのことが解らない」とし、身近に接しながら建築や建設への知識が少なく、「建物やインフラは与えら れたものとの認識が強く、また、必要だから存在するが、なぜ必要かを考えない」としながら、インフラを 提供する側も説明責任を果たしてないのではと指摘した。 また、建築は人の一生に関わるもので、「利用者に説明し納得してもらうことが重要」と述べ、一般市民と 建築には、力学・工学から行動計画、生態、環境、芸術、観光など、「建築は総合科学であり、市民との接 点も多い」とし、建築物を文化として、科学技術の塊として捉え、発達していくとし、「建築をつくること は未来をつくること」と語り、一人でもも多くの人に興味を持ってもらいたいとした。続く基調講演では、 毛利さんが‘未来建築としての宇宙ステーション’をテーマに、日本人初の宇宙飛行士として体験や、宇宙 開発の現状などについて約1時間にわたり講演。 毛利さんは、支部が創立された25年前は、地震対策の重要性は予見できなかっただろうとし、「建築構造を 理解してもらうため、社会的にオープンとした協会の役割は大きい」と述べ、宇宙開発においても、50年前 に人工衛星に初めて太陽電池が搭載され、30年まえに燃料電池が採用されたが、「太陽電池などはようやく 一般にも普及されてきた」と、長期にわたり継続して取組むことの重要性を指摘した。 日本はじめアメリカやEUなど5チームが共同開発する宇宙ステーションについて毛利さんは、「日本の占 めるウエイトが一番高い」とし、宇宙ステーション建設における日本の計画は、二つの実験室はじめ3つの ブロックで構成するもので、「最先端技術がぎっしり詰まっているもの」とした。 宇宙ステーションの建設は、1985年に構想されて以来、多くの実験・テストが繰り返されてきたが、実現段 階となった現在、「常に見える状態になったことで、他国との比較、競争となってくる」とし、今後は地上 からの支援が重要となるとした。 これら国際競争を勝ち抜くにあたり毛利さんは、「客観的なデータ、不測の事態に対応するシナリオ、説得 できる発言力が必要だ」と説き、それを生み出すには「従来にない新しい発想が必要」とし、広く一般市民 も含めた興味の高まりと支援の必要性を訴えた。 一方、パネルディスカッションは、記念事業として「あなたが考える建築の未来」をテーマに、支部が実 施した意見・アイデアコンペの入選者6名をパネラーに、各自が作品説明を行った。 なお、今回の記念事業は、(社)日本建築協会、(社)大阪府建築士会、(社)日本建築学会近畿支部、 (社)日本建築家協会近畿支部、(社)大阪建築士事務所協会、(社)建築業協会関西支部が後援。