今年2月、大阪府知事に就任した橋下徹知事は財政非常事態宣言を出し、2008年度当 初予算は暫定予算としながら、知事直轄の改革プロジェクトチームを発足させ、各部 局との議論を経て、総額1.100億円の削減を目指した「大阪維新」プログラムを策定、 財政再建プログラム等を柱に今年度の本格予算を成立させた。大阪府の社会資本整備 を推進する都市整備部の福田保部長は、2割削減を受け、「事業のペースダウンは避 けられない」としながらも、事業の重点化と選択により遅滞のない事業執行の決意を 見せる。その福田部長に、今年度の事業見通しなどを聞いた。 事業は維持管理にウエイト 大和川線、第2京阪は着実に推進 ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
――今年度の本格予算が決まり、かなり厳しいものとなっておりますが、まずは率直な感想を。 ■福田部長 事業の中には、今年度からの集中改革期間である3年間は一時休止せざるを得ないものもあ り、また、半分位の事業がペースダウンを余儀なくされている状況です。特に現場が動いている場合、例え ば連立事業では、地元市や電鉄会社など関係者と協議し、スケジュール調整などを行っており、こちらの都 合だけで遅れるということになると迷惑をおかけすることになりますから、厳しい状況ではあります。 ――知事が予算削減を打ち出し、各部局と改革プロジェクトチーム(PT)の話し合いの中で、都市整備部 では既に2割削減案を承認するとの姿勢でしたね。 ■福田部長 ええ、4月から7月までの四カ月間の暫定予算では必要額ということで削減がなかったですか ら、残り八カ月分の削減案は呑みましょうとなりました。ただ、来年度以降については、もう一度議論し直 してほしいとは言いました。 ――減額分の手当てといいますか、事業配分のバランスはどのように。 ■福田部長 やはり維持管理事業にウエイトを置かざるを得なかったですね。建設事業は一時休止やペース ダウンしても、現状にはあまり影響はありませんが、維持管理の場合、放置すればどんどん悪化していきま すから。ですから、水門や防潮堤などの防災施設、急傾斜法面など生命に係わるものなど、治水、高潮対策 や道路防災などは従来通りに実施していきます。 ――なるほど。 ■福田部長 また、橋梁の舗装などで予防保全として計画しておりましたが、これも従来通りのやり方、つ まり通行安全の観点から痛んだ箇所が出てくれば手当てをするやり方でしか出来なくなりました。これら防 災対策などに重点配分する関係上、草刈や清掃業務が従来のように行えず、ご迷惑をおかけすることになる かと思います。 ――主要プロジェクトの中では、安威川ダムと槇尾川ダムの本体着工がそれぞれ見送りとなりました。 ■福田部長 勿論、両ダムとも事業費削減の対象になっておりました。その中で特に安威川ダムでは、地元 の方々の生活再建対策として、付替道路事業を最優先事業として行うこととし、また、土地開発公社が先行 取得している用地があり、それの買戻しも必要となっており、それだけで精一杯の状態です。これらのこと から当初21年度に予定していた本体着工は、見送らざるお得なくなりました。 ――PTとの議論の中では、転流工と本体工を分離して進めるといった案もありましたが。 ■福田部長 部内で議論もしましたが、全体の事業費が抑えられたこともあり、分離しても本体工は後から ついてきますから、トータルに考えた場合、そんなに効果が上がらないということになりました。ですから 安威川ダムについては生活再建道路に全力投球ということになりますね。また、槇尾川ダムに関しまして も、安威川ダムと同じく付替道路最優先で進めていきます。 ――次に道路関係ですが、阪神高速大和川線と第2京阪道路の事業については。 ■福田部長 それらにつきましては、従来通りに着実に進めていきます。大和川線に関しては、阪神高速と 堺市、府と3者で実施しており、大阪府だけ遅れるというわけにはいきませんから、予定通りに2014年度に 供用開始いたします。街路事業など主な工事は殆ど発注済みでしたから、大きな影響はないと考えておりま す。 ――第2京阪は。 ■福田部長 関連する六路線で事業を実施しておりますが、これも2009年度に供用すると、国土交通省と西 日本高速道路との間で約束がありますから、従来通りのペースで取り組んでいきます。集中改革期間である 3年間の中で、出来る事業は終えてしまおうとの判断です。幹線道路の整備に関しては知事もその重要性を 認識されておりますが、予算削減については我慢してほしいと言われております。 ――今年度の新規事業では、水の回廊ライトアップ等があります。 ■福田部長 大阪ミュージアム構想の中での取り組みで、今年度は八軒家浜対岸の桜並木沿いで計画してお ります。天満橋から上流は既にライトアップされており、計画部分だけがありませんでしたから。 ――ところで、国交省からは先頃、淀川河川整備計画案に対する説明があり、府に対しても協力を求めてお ります。 ■福田部長 大阪府の立場で判断するのもひとつの方策ですが、やはり中流や上流の京都や滋賀との治水計 画との絡みもあり、府も含めた3府県と意見交換する必要がありますね。仮に大戸川ダムを実施するにして も、どういった手順、ペースでやるのかとか、府の財政状況を鑑みながら負担はどうなるかのと、国交省に そのあたりの説明は求めているところです。 ――当分は厳しい状況が続きそうですが、大阪の再生に向けてのご尽力をお願いします。ありがとうござい ました。