施工技術以外の事例集 (社)建築業協会関西支部(奥村太加典支部長)では、建築工事の施工過程 における様々なトラブルへの対応を図るための事例集「トラブル回避のため の共通認識」を発刊した=写真。施工技術以外に起因する各種トラブルの事 例を集め、その対応策などをまとめたもので、同支部技術専門委員会(宮崎 宏委員長)が作成した。委員会では会員各社に配付し、今後のトラブル発生 を未然に防ぐために役立ててほしいとしている。
建築工事を巡るトラブルは、技術上のミスや施工過程での問題発生など数多くあり、それらに関するトラブ ル事例集や対応策もこれまでにもあった。しかし、これらトラブルやミスの中には、施工者を原因とするも の以外も多数あったが、それらは「全て施工者サイドの問題」として処理されることが殆どとなっている。 この要因のひとつには、設計者や発注者側の認識不足も大きく関わっている。例えば、コンクリートはその 特性上、施工者側からすれば「ひび割れするのは当たり前」のことだが、その特性の認識不足によりトラブ ルが発生するなど、施工者側との認識の相違が課題となっていた。今回の事例集は、施工技術以外を要因と して発生したトラブルを紹介することで、発注者や設計者などに施工者との共通認識を持ってもらうことを 目的としたもの。編集にあたっては、技術専門委員会の下にワーキンググループとしての説明責任研究部会 (松井亮夫座長)を設置し、2007年6月から作業を進めてきた。 松井座長は、委員会各社が同じようなトラブルを抱えていることから、「問題を川上で整理するための共通 認識が必要」とし、委員会メンバー会社にアンケート調査を実施して事例を収集。各社から寄せられた251事 例を部位ごとに分類し、さらにトラブルの原因として?施工水準に関する認識不足と材料の特性?情報伝達 の不備と取り扱い方?設計仕様に関するものーの3ケースに分け、最も頻度の多かった60事例を選定した。 事例集は、計画・躯体・屋根・外装・内装・外溝・設備の七つの部位について、?から?のケースにより、 それぞれに発生したトラブルに関し、その要因と事例、原因推定、処置、再発防止対策から、トラブル発生 の背景解説と、各事例について知っておくべき共通認識を写真や表を使って解りやすく表記したほか、参考 文献も付記した。A4版の全138頁。 発刊にあたり宮崎委員長は、「(施工者としての)我々の思いを伝えたかった」とし、委員会メンバーで企 画段階から関わってきた釼吉敬前委員長も、「日本の建築生産システムに潜んでいた問題」であり、「設計 者や発注者とともに共通認識を確立し、少しでも良い方向にもっていければ」と語り、松井座長も「単なる トラブル事例集ではない」とそれぞれに期待を寄せている。 支部では、5千部を発行し支部会員に配布、社内や現場での研修や研鑽に役立ててほしいとしている。な お、希望者には一部2千円(送料・消費税込み)で頒布する。問い合わせは、同支部(電話06−6941− 4788)まで。