六甲山・山麓・都市への眼差し 六甲山木匠塾の主催によるトークイベント‘六甲山・山麓・都市への眼差し ー神戸の若手建築家の語り’が18日、神戸市中央区の兵庫県民会館で開催さ れた。トークセッションでは、神戸市在住の建築家である畑友洋氏と阿曽芙 実さんが、六甲山に関わる建築活動についての想いを、畑中久美子さんが土 の建築に関する活動を紹介したほか、木匠塾が六甲山系で実施した取り組み 事例の報告が行われた。 木匠塾は、中間山地や林産地の住民との協働によるものづくりを通して、森 の暮らしや木の文化を学ぶ体験活動で、建築や環境を学ぶ大学生を対象に全 国七カ所で活動が行われ、六甲山木匠塾では、阪神間の大学チームが結集 し、現在では山上と山麓、市街地のつながりを目指した活動を展開してい る。建築家によるトークでは、初めに畑氏が、六甲山トンネル南口再整備計 画の実施について、同トンネル料金所跡地の再整備コンペで最優秀賞となっ た同氏が、設計にあたっての考え方などについて語った。畑氏の作品「バー ドシティ」は、トンネル出入口に街灯や交通標識に交えて鋼柱を建てバード ハウスを設置し、六甲山に生息する多様な鳥たちの町とするもの。
設計にあたり畑氏は、環境は求めるものでも調和するものでもなく、「つくる」ことを大前提に、「環境は つくらなければ護れず、調和もない」とし、環境の捉え方は、個々の一定レベルで「密度を意識すること」 と述べ、設計への取り入れではマクロとミクロの視点が必要だとした。 次いで阿曽さんが、昨年JIA近畿支部が、六甲山上の展望台をテーマに実施した設計コンペで優秀賞とな った自身の作品「絡み合う窓から見えるもの」についてを解説。阿曽さんは、「六甲山上に浮かんだもの、 霧や雲、風の中に消えてしまいそうな建築をつくりたかった」とする。作品は、360度の眺望を開く「方向性 を持たない場所」に、部屋でもなく廊下でもない空間の連続性により方向性を見出す作品で、鉄板をカーテ ン状に吊るし「ふんわりと浮かぶ状況」をつくりだすまでのコンテンツの作り方の経緯などを熱心に語っ た。 畑中さんは、土でくる家「版築」についての取り組みについて自らの実証結果とともに紹介。版築は、土と 石灰を混ぜ合わせ型枠に込めてたたいて締め固め、順次積み上げていく手法で、竜安寺や法隆寺、西宮神社 など国内はじめ、中国やモロッコなど海外での事例も紹介した。 版築への興味は、塗壁と比べ「技術的な謎が多い」ことからで、自ら手掛けた事例では、壁厚45?実験棟の 成果を報告。土と石灰の配合比率や型枠の重要性などを指摘するとともに、「セルフビルド」の苦労などを 語った。 イベントではこのほか、六甲山木匠塾の取り組みとして、登山道に単管と竹によるステージを設け、展望や 野鳥観察、ミニ演奏会など、さまざまに利用できるスポットをつくった‘六甲山系高取山「森の空中庭 園」’の活動報告と意見交換などが行われた。