「パッテンライ!!南の島の水ものがたり」関係者らが会見 台湾で今もなお語り継がれる日本人の土木技師、八田與一の業績を描いた長 編アニメ映画「パッテンライ!! 南の島の水ものがたり 」が公開に先立 ち、このほど記者会見が大阪市内で行われた。アジア一の規模といわれた烏 山頭ダム建設工事を指揮した八田の生き様にスポットをあてながら、真の社 会資本の役割や土木技術者の使命を問いかけている。会見には、製作を担当 した虫プロダクションの伊藤叡・代表取締役と石黒昇監督、企画者の緒方英 樹・財全国建設研修センター広報室長、土木学会コミュニケーション委員会 幹事長の藤井聡・京都大学教授らが出席した。 八田與一は、日本統治時代の台湾に総督府の技師として派遣され、そこで農 民のための灌漑事業の必要性を訴え、10年の歳月を懸けダムと用水路を完成 させた。その功績は「農業用水の恩人」として台湾でも広く知られ、現地で は銅像が建てられ現在でも現地の人々による法要が営まれている。 八田は石川県金沢市の出身で、毎年、台湾で法要が営まれてることを知った 地元の人々が八田の業績を掘り起こし、広く知られるようになったもので、 金沢の小学校や台湾でも教科書に掲載された。
会見で緒方氏は「10年程前から映画化の構想を練っていた」とし、映画化にあたっては、土木技術者として の本懐を遂げた八田の生き様を伝えることで、「大人の本気を見た子供達が夢を見れるように」との想いを 込める。 製作面では伊藤代表が、「子供達が自分の夢を実現したいと思えるような映画を」として、子供達の目を通 して見た八田の在りようを描いたものとした。石黒監督は、土木事業は人の幸福にためにあると信じ、完成 させたことに感銘を受けたと述べ、「調べれば調べるほど、八田という人物の存在感が増し、それだけでも ドラマになる」と評し、「若い人にも理解してもらえるような描き方をした」とし、「こういう人物が実際 に居たことを分かってもらいたい」と語った。また、藤井教授は、公共事業に対する批判が多い現在、公共 事業は人を幸せにするという視点を強調し、「映画を見た子供達が土木技術者へ憧れ、実現し、また実現し なくとも記憶に残ってもらえれば」と期待を寄せ、いろんな方々に見てもらいたいーとした。映画は、台湾 南部の嘉南平原にダムを築き、用水路を整備するまで様々な苦難を乗り越えていく八田與一の生き様を、日 本人と現地の少年の目を通して描く。2007年3月から現地取材を開始し、昨年11月に完成。既に金沢市で先 行上映が行われた。 封切りは、八田の命日である5月8日に東京で公開するほか名古屋、大阪で上映。大阪では5月23日からテ アトル梅田で公開される。製作は「パッテンライ!!ー南の島の水ものがたり」政策委員会と北國新聞社、虫 プロが担当し、文化庁の支援と台北駐日経済文化代表処、台南縣政府が特別協賛を行っている。また、主題 歌「受け入れて」を、台湾人を父に持つ歌手の一青窈さんが、さらに妹の一青妙さんが八田の妻役で声の出 演を行っている。 なお、タイトルの「パッテンライ」とは、現地語で「八田が来た」との意味。