
創意工夫で自主財源の確保も 元気のある大阪の再生を目指し、行財政改革の進む大阪府の中で都市基盤の 整備に取り組む都市整備部。経済活動や日々の暮らしを支える道路はじめ、 治水や防災など、その守備範囲は広い。財政再建下での事業執行には厳しい ものがあるが、どのような状況の中にあってもインフラ整備の後退は許され ず、都市整備部では独自の工夫と知恵により各種施策の展開に務めている。 その都市整備部の部長に就任した井上章部長は、施策の推進にあたり「職員 の力を結集して事業を進めたい」とする。その井上部長に就任の抱負や今後 の取り組みについて聞いた。
――まずは就任にあたっての抱負から。 「都市整備部の基本的なミッションは都市基盤整備を着実に進めていくことと、既存の都市基盤を確実に維 持管理していくこと。この二点が大きな使命だと考えております。特に財政的に厳しい中での維持管理業務 には様々な工夫が求められております」。 財政をはじめ、あらゆる分野での改革が進められている中での部長就任にあたり「緊張している」とする井 上部長。就任に際し職員には、選択と集中のさらなる重点化、財源確保に向け皆の知恵を結集し、いろんな アイデアを活用してほしいーと呼びかけたとし、「その中で我々のミッションを粛々とやっていくことで す」と語る。しかしながら、職員の改革マインドは旺盛であり、「その職員の意欲、モチベーションを低減 させないよう、対話を重視しながら取り組んでいきたい」と自身の役割を述べる。 ――今年度事業の見通しでは。 「建設系事業では、完成間じかで早期の事業効果が見込める事業や安全と安心に関わる事業、市町村等との 相互協力が必要な事業を優先的に実施するという順位付けが整理されましたので、これをさらに重点化して 進めていきます」。 主な事業では、今年度末に供用を予定している第2京阪道路の府関連道路や渋滞対策としての立体交差事業 の千里丘三島線と千里丘寝屋川線に力を注ぐ。連立事業では阪神高速大和川線や和泉中央線などを進めてい くとする。また、治水事業では槇尾川ダムの本体着工に向けての準備、防災関連では、津波高潮ステーショ ンも今秋の完成とそのPRに務めたいとするほか、今年度から市街地整備課が都市整備部へ移管したことか ら、「面的整備と都市基盤整備の一体的実施が可能となった」とし、併せて箕面森町の販売促進にも取り組 んでいく。 公共施設のエンドユーザーは府民であり、その府民に迷惑をかけないようにしたいーとする井 上部長。そのためには既存施設の維持管理をしっかりとすることが最大の使命とする。「そのために必要な 自主財源確保に向けた努力は致しますし、その分はしっかり使わしてもらいますと知事にも申しました」 と、今後の事業執行にも意欲を示す。 元来、「現場主義」を標榜していた都市整備部だが、今年度からは知事の提唱する「地域力の再生」を推進 するため、各土木事務所に地域支援課が設置された。関係部局と横断的に提携、地域に軸足を置いた業務を 支援するもので、「これが上手く機能するように支援していきたい」とする。 ――その地域力を担う地場企業、特に建設業が疲弊しておりますが。 「経営状況の厳しさは認識しております。その中で我々としては入札契約制度の中で、価格だけでなく総合 評価方式など、企業の技術力が評価できるよう努めておりますが、これにさらなる改善を加えていきたいと 思っております」。 都市整備部では昨年度より、災害時等の緊急時に備え事前審査による地元業者の登録制度を開始しており、 これへの登録を呼びかけているほか、元請に対し府内業者の参入協力などの要請や7月からは土木一式工事 のB1等級では原則的に府内業者に限定するなどの措置を打ち出している。 一方、都市整備部が誇る「鉄の団結」の伝統は健在。知事の奨励する各部長と職員の意見交換も、従来から 実践していたもので、風通しの良い風土はそのままだ。特にスパンの長い土木事業では、「現場を通して先 輩が後輩に経験や知識を伝えてきた」。しかしながら事業量が減少する中ではその機会も減り、このため、 数年前から若手職員を中心に自由テーマによる議論と発表の場を設けるなど、新たな形の経験と実践の場が 培われている。 入庁以来、多くの道路整備に関わってきた井上部長。印象に残るものでは、高槻市での幹線道路工事で事業 凍結により工事がストップし、その後10年以上を経て開通した時に「便利になった」との地元の声に触れた 時の喜びを上げる。また、集中豪雨による被害を目の当たりにし「まったなしの維持管理の重要性を痛感し た」とする。 さらに、「都市の骨格ともいえ、都市整備部の目指すべき将来のプランが詰まっている」道路と鉄道が一体 となった交通道路のマスタープランの策定にも携わった。現場から政策まで、インフラの役割と整備の重要 性を熟知する井上部長の舵取りに期待が集まる。 井上章 (いのうえ・あきら)1973年、大阪大学工学部土木工学科卒。同年4月から土木部土木総務課に勤務、その 後、富田林、八尾、茨木の各土木事務所、1987年5月、土木部道路課主査、1991年5月、東京事務所主幹、 1999年5月、茨木土木事務所長、2001年4月、総務部副理事、2002年4月、土木部副理事兼交通道路室道路 整備課長、2003年4月、交通道路室長、2005年4月、土木部理事、2006年4月、住宅まちづくり部理事、 2007年4月、都市整備部技監を経て、今年4月から現職に。大阪市出身。58歳。