地元建設業者の汗と努力、高く評価 ・・・・ 足立部長
中小企業が持つ高い技術とも連携を ・・・大西教授
中小企業が持つ高い技術とも連携を ・・・大西教授
大西教授 日本の場合、技術的には専門工事会社に依存しているところが多く、小さな会社でも非常に高い技術を有している会社があります。そうした会社が売り込むチャンスをどう官が認めていくか。また、いつも問題になるのは、開発された技術が本当に使えるのかどうかの判断が中小企業では出来ないこと。そういった場合には、大学に依頼されればいいと思います。いま、中小企業と学の連携は、ほとんど行われていません。情報が少ないため、大学も中小にアプローチしにくい面があります。産・学・官連携の機運が高まれば、中小企業と連携を図る良いチャンスだと思います。機械の部品を開発している東大阪市の中小企業などは、結構、官や学と連携をとりながらプロジェクトを楽しく進めておられますね。そういった関係が中小の建設企業との間でも生まれるとよいのですが…。
足立部長 そうですね。各府県の建設業協会では青年部が組織されており、将来を担う若手経営者が危機意識を持って勉強しています。最近は防災面における建設業界の役割について議論されていますが、ぜひそのような段階で、大学とも連携がとれる場がつくれないものかと思います。
大西教授 それが本当に表に出てくるとおもしろいですね。
足立部長 青年部の皆さんと議論していると、総合評価が広がっていく環境に期待しておられることが分かります。これまでは、新技術を開発してもなかなか認めてくれなかったけれども、これからは総合評価でどんどん提案していきたいとの声も上がっています。総合評価も適切な評価項目を設定していくと、中小業者の皆さんにとってもやる気が出てくるものと思います。
大西教授 中小企業の産・学・官の連携は、今後、推進すべき大きなポイントになるでしょうね。
地元業者の存在
足立部長 平成十六年に発生した災害などで、堤防が切れた箇所を二十四時間働いて直していたのは現地の建設業者でした。豊岡市の出石の堤防が切れて復旧作業に携わった人の話では、自分の家は水没している、奥さんも子ども避難所に行っている、一週間後にはまた大きな台風が来る、最後は携帯電話も電池切れで繋がらなくなる、そんな悲惨な状態の中で、全力で復旧作業に当たってくれました。同じような厳しい作業を各地で行っていただきました。しかし、そのようなことは、一般紙には載りません。当たり前だと皆さんは思っているんでしょうか。しかし、私たちは地元の建設業者の皆さんがひとたび何か起こった時に、勇気を持って立ち上がってくれることを決して忘れてはいけないと思います。こうした地元の建設業者の役割をきちんと理解していただかないと、大災害が発生した時にその地域は立ち直れなくなってしまうと思いますね。
大西教授 いま、国民にとってインフラは整備されて当たり前と受け止められており、そのありがた味が分からなくなっています本当に残念なことです。新潟中越地震でも、物資を運ぶ国道が建設業者によって直ちに修復されたことやその苦労については、全く報道されていませんでした。
足立部長 昨年末の福井の豪雪の時にも、夜明けから夜中まで地元の建設業者の皆さんが除雪作業をしているんですね。一般の人からは「どうせ国から除雪費をもらってやっているのだから」との一言で片付けられてしまうようですが、それは間違っています。自衛隊やボランティアの活躍に光が当たるのは分かりますが、自衛隊の皆さんだって給料をもらって活動しているのです。私は「皆さんも誇りを持ってやって下さい」と建設業者の皆さんを励ましています。お金だけでなく、汗と努力も評価してあげないといけません。そのためにも、新しい技術を取り入れ、次の時代にも対応できるよう地元の建設業者の体質を改善していくことが大切だと思っています。
大西教授 地元の中小業者が誇りを持って仕事をするためには、官がどう支援体制を構築していくかでしょうね。産・学・官連携といってもいろんなレベルの業者あり、今後はそれぞれの力量に応じた、底辺までの広い協力体制が必要になってくると思います。様々なキャンペーンを張ったり、話し合いを通じて、社会評価が上がるようなニーズとシーズのマッチングを考えていかなければいけないでしょう。欧米のシビルエンジニアは社会的地位が高く、地域にも根付いて活発な社会貢献をしています。そのためには、しっかりした教育と地道な努力が必要でしょう。こうした姿に近づくように、いま日本の大学は学生教育に加えて、地域との協力、社会の要請に応える開かれた大学を目指して大転換しつつあります。研究室への門戸も広く、敷居も低くなっています。建設業の方々も技術面だけでなくいろいろなことで困っている時は、遠慮なく大学を訪ねてほしいと思います。様々な人間がいますから。
足立部長 国も大学の改革に乗り遅れないよう、今後も産・学・官の連携を一層強化しながら新技術の活用に向けて頑張っていきたいと思います。よろしくご指導お願いします。