今後も職人の地位向上に努力 今回の受章について「うれしい反面、職人の地位や賃金が以前に比べて下がっている現 状を考えると、私だけが受章するのは少し心苦しい」と正直な感想を話すのは、この春 の叙勲で旭日双光章の栄に浴した北浦年一・(社)大阪府建団連会長((株)北梅組相 談役)。常に職人のことを第一に考えている人柄を感じさせる。感謝したい人はとの問 いには、しばらく考えて「言いたいことを言ってきた私の話にも耳を傾け、理解を示し てくれた元請かな」と苦笑いしながら答えてくれた。専門工事業の躯体一筋に50年余の 経験と実績を誇る。業界のリーダーとして同業者はもちろん、元請からの信頼も厚い。 近年は近畿地方整備局など発注官公庁とも積極的に交流を深め、地位向上に努めてい る。
【写真:北浦会長】
自身について「私にはこの仕事しかないと思って、迷わずに続けてきたのが良かったのかも」と振り返る。思 い出に残る工事として大阪万博、花博、関西空港などとともに、東大寺の昭和の大改修をあげる。いずれも 人々の記憶に残るビッグプロジェクトだ。また「20代の10年間には先代の父からも大きな影響を受けた」と話 し、その後の仕事を進める上で多くのことを学んだ。業界を取り巻く厳しい環境の中で「いつの時代にも困難 はあったが、父や私も含め先人たちはそれを克服してきた」と述べ、今の若い人たちにも努力と奮起を促す。 建団連や近畿建専連のトップとして「元請や官公庁に対して単に言われたことを聞いたり、お願いするだけで なく、こちらから提案していけるような団体に」と決意を示す。雇用改善法の一部改正に伴う技能者の派遣や 品確法の施行などにより、建設業全体が大きく変わろうとしている中で「ここ1から2年が専門工事業にとっ て大事な時期になる。建団連を優秀な職人や専門工事業の中核となるような職人の集団にしたい」ときっぱ り。 今後の抱負について「ものづくりの原点に返る」という持論を述べながら「昔に比べ元請との地位や賃金の格 差が開きすぎている。現場の第一線で働く職人のためにも専門工事業を今より少しでも良くしたいと思う。そ れが建設業の健全な発展にもつながる」と力強く締めくくった。ちょうど70歳の誕生日である4月29日に、今 回の旭日双光章を受章した。5月10日に東京都内のホテルで伝達式が行われた後、皇居での拝謁式が予定され ている。 ■北浦年一(きたうら・としかず)1955年3月兵庫県立高砂高校卒業、同年4月北梅組入社。1966年6月代表 取締役社長、1994年1月代表取締役会長、2004年8月相談役(現在)。2000年5月社大阪府建団連会長(現 在)。2003年4月建設産業専門団体近畿地区連合会会長(現在)。1988年5月近畿建設躯体工業協同組合理事 長、2004年5月同名誉理事長(現在)。1975年1月社日本建設躯体工業団体連合会副会長、2004年5月同辞 任。1987年5月大阪府知事表彰、1993年7月建設大臣表彰、1994年11月黄綬褒章受章、2006年4月旭日双光章 受章。大阪府出身、70歳。