
大阪・北ヤードナレッジキャピタルの方向性について語るパネルディスカッ ションが12日、大阪市北区の堂島リバーフォーラムで行われた。2日間にわ たり開催された「ナレッジキャピタルトライアル2009」のオープニングトー クセッションとして実施されたもので、建築家・安藤忠雄氏らが参加した。
トークセッションには、安藤氏はじめ、関西経済同友会の斎藤紀彦代表幹事、情報学研究所の坂内正夫所 長、日本総合研究所の寺島実郎会長、ナレッジキャピタル推進室の畚野信義室長、大阪21世紀協会の堀井良 殷理事長、ファションデザイナーのコシノヒロコさんのKMO設立準備委員会のアドバイザリーボードメン バーをパネラーに、総合アドバイザーである情報通信研究機構の宮原秀夫理事長をコーディネーターとして 行われた。 ナレッジキャピタルの可能性や期待について、安藤氏は、先端技術と感性のぶつかり合いで新たな世界を創 造するという「今まで大阪がほったらかしにしていた分野」とし、ナレッジキャピタルには新しい時代をつ くる若い人を呼び込み、「デジタル世代とアナログ世代がぶつかりあい、出会える場となる日本の新しい試 み」と期待を寄せた。 同友会の斎藤代表幹事は、景気減速からの脱出はイノベーションが大事で、「イノベーションはしばしば偶 然の出会いから生まれる。この出会いを仕組みとして構築し、ナレッジキャピタルがマッチングの場となる ことを期待する」とした。 坂内氏は、情報の世界ではネットの中だけの情報が社会活動や実生活に入ってきたと指摘、今後は利用者も 含めたオープンな研究開発システムが重要とし、「若い人を通じて世界中で活用できるなど、オープン化進 む中ではナレッジキャピタルに期待できる」と情報分野からのアプローチを示した。 寺島氏は、「知の集積」の必要性を訴えながら、アジアとの結びつきを上げ、特に「中国の経済と人の動き も重要なファクターとなり、それら時代のうねりを引き付けることが大事だ」とし、また日本が誇る先端技 術の活用を述べながら、議論を尽くした方向性が重要との見方を示唆した。。 畚野室長は、ナレッジキャピタルには競争原理が働くことは必要だが、「営利追求の場とするべきではな く、コアな部分は単なる集客の場とすべき」と、他の再開発事業と比べ商業優先主義を警告。コシノ氏は、 海外での体験を基に各分野での環境整備の必要性を述べ、特に「大阪のまちには若い人が少なく、それらを 引き付けることも大切では」とした。 堀井氏は、「この地区は大阪の顔であり、顔の後ろは頭脳である」として、それに見合ったまちづくりが絶 対条件だと強調。そのためには、梅田というアクセスの良さを活かし、京都や奈良などの歴史と文化の蓄積 を結び「関西の結節点としたい」と期待を込めた。 今後のトライアルのあり方については斎藤代表幹事が、最終的な情報収集の場とし、世界の評価を意識した 目線、開発者のみならず「消費者や生活者が参加できる仕掛けも必要では」と意見を述べたほか、世界の拠 点となるためには、「装置としての努力、凄みのある情報集積を」(寺島氏)、「技術力のある中小企業の ネットワーク形成、箱づくりより運用・運営を」(安藤氏)などの発言が出た。 最後に宮原氏が、今後の検討にあたっては「協調と競争」も重要になろうとしながら、「かつての世界大恐 慌の時期、大阪は御堂筋拡張など、大胆な都市改造、都市づくりを断行した」とし、それら先人達の気概に 倣っていこうと呼びかけた。